平成30年度テーマ研究
坪内逍遙・坪内士行資料の基礎的調査研究
イベント報告
報告者:小島智章
当チームによる坪内逍遙・坪内士行関係の未整理資料の調査・研究の成果について、報告会(主催:早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点)を開催した。発表は研究分担者5名により行われた。
水田佳穂「坪内士行の講演記録―大正末年の新劇活動を中心に―」では、士行旧蔵の講演腹案のうち、大正末年の39件について報告した。同時期に士行が主宰した戯曲研究会(のちに芸術協会)の舞台写真を提示しながら、士行が主張した新しい日本の演劇のあり方について考察した。松山薫「逍遙と池田大伍—大正中期の逍遙宛池田大伍書簡をめぐって—」では、逍遙宛大伍書簡7通の内容を読み解き、「逍遙日記」と対応させつつ、大伍の無名会時代の活動、劇談会、「名月八幡祭」創作過程と逍遙との関係などの具体的な考察を試みた。柳澤和子「若松若太夫が逍遙に宛てた大正十三年の書簡」では、車人形東京公演を契機に生まれた逍遙と説経節の太夫である若太夫の関係を、書簡によって辿ると共に両者の日記等によりその背景を考察した。濱口久仁子「西川嘉義―舞踊活動と晩年の動向―」は、逍遙の遠縁にあたる名古屋の西川流舞踊家西川嘉義(織田嘉義)について、逍遙との関係、最期のいきさつ、追善舞踊会を取り上げた。加えて士行の妹織田志づの逍遙宛書簡を紹介した。小島智章「石割松太郎と逍遙」では、書簡や逍遙日記、回想録等から、石割と逍遙及び早大関係者との交流の様相を詳らかにするとともに、石割が人形浄瑠璃研究を始めた時期や動機について検討を行った。
当チームでは、坪内逍遙・坪内士行資料を整理・撮影し、それを基に研究を進めており、今回は様々な角度から研究の一端を公開することができ、有意義な成果発表会となった。