公開研究会

崑劇と日本の百年

報告

報告者:平林宣和

上海崑劇団と早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点主催による講座と上演「崑劇と日本の百年」が、2018年10月23日に大隈記念講堂大講堂で行われた。
この催しは、東京国際映画祭参加のため来日する上海崑劇団の代表団から、これまで国内で実施してきた崑劇普及活動「崑劇走進校園」をぜひ早稲田大学で開催したい、という申し出があったのに対し、演劇博物館と連携研究拠点がそれに応じる形で実現したものである。
2019年は、世界的に著名な中国の女形俳優梅蘭芳が初めての訪日公演を行ってから、ちょうど100年の節目の年となる。早稲田大学とも深い縁のある梅蘭芳は、この時に崑劇の演目を複数披露し、当時の人々は日本の舞台で初めて中国の崑劇を目にすることになった。今回の催しでは、この公演以来の崑劇と日本との関わりを回顧することを主旨に、タイトルを「崑劇と日本の百年」とし、上海崑劇団には特に梅蘭芳が来日時に演じた『玉簪記・琴挑』を上演してもらうこととなった。

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当日は開場前から多くの観衆が大隈記念講堂前で列を作り、最終的には600名を超える入場者があった。第一部では、演劇博物館の岡室美奈子館長、および文化推進部の石見清裕教授より開会の挨拶があった。続いて政治経済学術院の平林宣和教授が、連携研究拠点で研究を進めている福地信世の資料を活用しつつ、「崑劇と日本の百年」というタイトルの意義を説く解説を行った。その後、上海崑劇団の団長で、上海市の伝統芸能界を統括する上海戯曲芸術中心の総裁でもある谷好好氏より、崑劇および上海崑劇団に関する講演が行われた。

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第二部では、まずコーディネーターを務めた陸海栄氏による上演演目の解説があり、さらに劇団に随行して来日した古琴奏者の楊致倹氏が、日中の琴を通した交流の歴史を講じたのち、名高い「高山流水」の曲を披露した。中国の古琴は、崑劇と同様にユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。

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続いて崑劇三演目が上演された。最初の『扈家荘』と二番目の『虎嚢弾・山亭』は、いずれも『水滸伝』に基づく芝居で、銭瑜婷氏による扈三娘の激しく流麗な立ち回りや、呉双氏演じる魯智深と酒売りのユーモラスな演技に、会場からは盛んに拍手喝采が送られた。

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続く三番目の『玉簪記・琴挑』は、日本で上演されることは極めて稀で、主演の黎安・陳莉両氏が演じる書生潘必正と尼僧陳妙常の琴を通した心の探り合いに、観衆は終始息を飲んで見入っていた。

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終演後には谷好好団長と岡室美奈子館長の間で感謝状と記念品の交換があり、日中平和友好条約締結40周年、演劇博物館開館90周年、上海崑劇団建団40周年を祝う催しにふさわしく、和やかな雰囲気のもとに幕を閉じた。

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