2023(令和5)年度
奨励研究課題
2023(令和5)年度共同研究課題一覧
- 別役実草稿研究(梅山いつき)
- 倉林誠一郎旧蔵資料の調査研究(後藤隆基)
- 「映画館チラシ」を中心とした映画関連資料の活用に向けた調査研究(岡田秀則)
- 江口博旧蔵資料にみる戦時下から戦後の舞踊(宮川麻理子)
- 日記から考える歌舞伎役者を中心にした江戸中期の文芸圏研究(Björk, Tove Johanna)
- GHQ占領期における地域演劇の実証的研究
――九州地区を中心に (小川史) - 栗原重一旧蔵楽譜を中心とした楽士・楽団研究
――昭和初期の演劇・映画と音楽 (中野正昭) - 常磐津節正本板元坂川屋の出版活動(竹内有一)
- 歌舞伎の「解説」の歴史と変遷
――観客に供せられたメディア (渡邊麻里) - 演劇博物館所蔵落語・講談関連資料の調査・研究
――田邉孝治旧蔵資料を中心に (赤井紀美) - ⽇英の⼥性劇作家・劇評家たち
――16世紀中頃から21世紀まで (石渕理恵子) - 太田省吾関連資料研究
――2023 年度早稲田大学演劇博物館特別展に向けて (金潤貞) - 大和屋竺旧蔵資料の調査研究(川﨑佳哉)
- 撮影所システム衰退期におけるプログラム・ピクチャーの実態研究(鳩飼未緒)
奨励研究課題
歌舞伎の「解説」の歴史と変遷
観客に供せられたメディア
代表者
渡邊麻里
課題概要
舞台芸術では、観客は何かしらの情報を事前に取り入れ、舞台を鑑賞することが少なくない。特に現代で「古典芸能」や「伝統芸能」といわれるジャンルには、「解説」が溢れている。近年、歌舞伎の劇場ではテクノロジーを用いた観劇中の視覚・聴覚メディアによる解説が導入されているが、これまでもあらすじが書かれたチラシや筋書といった印刷メディア、出版物が観客の手引きとなってきた。しかし、「解説」はいつから観客に提供されるようになったのだろうか。近世にはそうした役割を果たすものがあったのだろうか。広義では番付等がそれに当たるのかもしれないが、まだ検証できていない。本研究では、番付、筋書、パンフレット、演劇雑誌などの資料から、その歴史と変遷を追う。
奨励研究課題
演劇博物館所蔵落語・講談関連資料の調査・研究
田邉孝治旧蔵資料を中心に
代表者
赤井紀美
課題概要
演劇博物館には多くの落語・講談関係の資料が所蔵されている。特に近代を中心に様々な資料(AV資料、プログラム類)があるが、未整理の状態のものがほとんどである。落語・講談を含めた近代の寄席芸については未だ明らかになっていない面があり、これらの資料を整理・活用することで新たな研究の展開がみられると考える。また寄席芸は近接領域として演劇、特に商業演劇と深い関りがある。近代における寄席芸の様態を明らかにするこ とは、近代商業演劇との相互影響また往還関係についての新たな視点を得られると考える。館所蔵の関連未整理資料のうち、田邉孝治旧蔵の講談関連資料の調査を行う。同資料のうち貴重な音源資料の目録化は昨年度すでに行っており、本年はこれを踏まえたさらなる調査・研究を行う予定である。
奨励研究課題
⽇英の⼥性劇作家・劇評家たち
16世紀中頃から21世紀まで
代表者
石渕理恵子
課題概要
本研究では、⽇英の⼥性劇作家・劇評家に焦点を当て、演劇博物館所蔵の資料を中⼼に発掘・研究を⾏いたい。英国では16世紀中頃〜17世紀前半頃にエリザベス・ケアリやメアリ・ロウス等を嚆⽮として戯曲を書く⼥性が誕⽣し、17世紀中頃にはマーガレット・キャヴェンディッシュ等の劇評(特にシェイクスピア批評)をする⼥性も登場した。明治期以降の⽇本でも、坪内逍遙と縁が深い⻑⾕川時⾬や⼩⼭内薫の妹の岡⽥⼋千代が劇作を⾏い、⻑⾕川や岡⽥は三⽊⽵⼆の妻である森久⼦(真如)と共にシェイクスピアの劇評も書いている。これらの⽇英の状況等も踏まえ、超時代、超地域的に⽇英の⼥性がそれぞれの国の演劇⽂化の発展に如何に貢献したかを⽰す関連資料を幅広くデータ化し、将来の国際的な共同研究の基盤作りを⽬指したい。
奨励研究課題
太田省吾関連資料研究
2023 年度早稲田大学演劇博物館特別展に向けて
代表者
金潤貞
課題概要
本研究は、太田省吾と佐藤信関連資料を中心にこの2年間行ってきた研究課題、「太田省吾関連資料の所蔵現状調査及びその活用方法研究」と「日本小劇場演劇関連資料調査及びその活用方法研究」を発展させるものとして、対象を太田省吾に絞り、その関連資料を具体的な活用方法を模索していく。今年度は既に2023年度早稲田大学演劇博物館の特別展として「太田省吾展」(仮題)と、その関連イベントとして研究会及びシンポジウムの企画が進行している。本研究はそれらの開催に向けて、太田省吾関連資料をこれまで以上に体系的に精査し、成果公開につなげることを目指す。
奨励研究課題
大和屋竺旧蔵資料の調査研究
代表者
川﨑佳哉
課題概要
大和屋竺(1937-93)は、脚本家、監督、俳優であり、映画だけではなくテレビドラマやアニメの製作に関わるなど、多岐にわたる活動を展開した人物である。演劇博物館は、大和屋が関わった作品の(シナリオを中心とする)資料を多数所蔵しているが、これらがまとめて研究対象として取り上げられる機会はなかった。本研究は、脚本家として若松孝二や鈴木清順の作品などに関わり、監督としても『裏切りの季節』(1966)や『毛の生えた拳銃』(1968)といった異色作を作った大和屋の活動の実態を明らかにすることを目指す。
奨励研究課題
撮影所システム衰退期におけるプログラム・ピクチャーの実態研究
代表者
鳩飼未緒
課題概要
本研究は、主に 1960年代から1980年代にかけての撮影所システム衰退期の日本映画における撮影所のプログラム・ピクチャーを考察するものである。中でも、比較的低予算で作られる映画群(Bピクチャーと称されるような添え物的な映画や性的な要素を売り物にする成人映画)を主たる研究対象とする。こうした映画たちは従来の映画研究では研究対象とされることが少なく、その実態があまり知られていない。本研究では映画作品のテクストのみならず、シナリオ(演劇博物館所蔵)、予告篇やポスター、プレスシートなどの宣伝資料、雑誌の批評言説といった関連資料を複合的に調査・分析することで撮影所システム衰退期の変遷を辿りつつ、対象の映画群を同時代の社会状況の中に位置づけて再検討・再評価することを目指す。