平がなれの果其身はふ義の誤りから一味同心も叶はずせめては石牌の連中にと女房売て金調へ其金故に舅は討れ金は戻され詮方なく腹切て相果し其時の勘平が心嘸無念に有ふ口惜からふ金戻したは由良助が一生の誤りふ便な最期を遂さしたと片時忘れす肌はなさず今宵夜討も財布と同道平右衛門そちが為には妹婿焼香させよと投やればハヽヽヽヽはつと押いたゝき〱草葉のかげゟ嘸有がたう存ましよ冥加に餘る仕合と財布を香爐の上に着二番の焼香早の勘平重氏と高らかに呼はりし声も涙にふるはすれば列座の人も残念の胸も張裂計也思ひがけなや人馬の音山谷にひゝく責太鼓ときをどつとぞ上にける由良助ちつ共騒がず扨は師直が一家の武士取かけしと覚たり罪つくりに何かせんと覚悟の所へ桃井若狭助おくればせにかけ付給ひヤア〱大星今表門より責かけたは師直か弟師安此所で腹切ては敵に恐れしと後代迄の譏塩冶殿の御菩提所光明寺へ立退べしと仰にはつと由良助いか様最期を遂る共亡君の墓の前仰に従ひ立退申さん御殿頼上るといふ間もあらせずいづくに忍び居たりけん薬師寺次郎鷺坂伴内おのれ大星遁さじと右往左往に討てかゝる力弥すかさず請ながし〱暫時が内は討合しがはづみを打てうつ太刀に袈裟にかけ
平がなれの果其身はふ義の誤りから一チ味同心も叶はずせめては石牌の連ン中にと女房売て金調へ其金故に舅は討れ金は戻され詮ン方なく腹切ツて相果し其時の勘平が心嘸無念に有ふ口惜からふ金戻したは由良ノ助が一ツ生の誤りふ便な最期を遂さしたと片時忘れす肌はなさず今宵夜討も財布と同道平右衛門そちが為には妹婿焼香させよと投ケやればハヽヽヽヽはつと押シいたゝき〱草葉のかげゟ嘸有がたう存ましよ冥加に餘る仕合セと財布を香爐の上に着セ二番の焼香早の勘平重氏と高らかに呼はりし声も涙にふるはすれば列座の人も残念の胸も張裂計也思ひがけなや人馬の音山谷にひゝく責太鼓ときをどつとぞ上にける由良助ちつ共騒がず扨は師直が一ツ家の武士取かけしと覚たり罪つくりに何かせんと覚悟の所へ桃ノ井若狭ノ助おくればせにかけ付ケ給ひヤア〱大星今表テ門より責かけたは師直か弟師安此所で腹切ツては敵に恐れしと後代迄の譏塩冶殿の御菩提所光明寺へ立退べしと仰にはつと由良ノ助いか様最期を遂る共亡君の墓の前仰に従ひ立退キ申さん御ン殿頼上るといふ間もあらせずいづくに忍び居たりけん薬師寺次郎鷺坂伴内おのれ大星遁さじと右往左往に討ツてかゝる力弥すかさず請ながし〱暫時が内は討合しがはづみを打てうつ太刀に袈裟にかけ
地:焼香,ハル:焼香地/ハル
中:投やれば中
ウ:ハヽヽヽヽウ
ウ:財布をウ
色:上に色
詞:二番の詞
地:高らかに,ハル:高らかに地/ハル
ウ:声もウ
上:列座の,ウ:列座の上/ウ
ウ:残念のウ
フシ:胸も,中:胸も,ノル:胸もフシ/中/ノル
ハル:張裂計也ハル
地:思ひがけなや,ハル:思ひがけなや地/ハル
ウ:山谷にウ
フシ:ときをフシ
地:由良助,ハル:由良助地/ハル
色:ちつ共色
詞:扨は詞
地:罪つくりに,ウ:罪つくりに地/ウ
ハル:おくればせにハル
色:かけ付色
詞:ヤア詞
地:仰に,ハル:仰に地/ハル
色:由良助色
詞:いか様詞
地:いふ,ウ:いふ地/ウ
ハル:居たりけんハル
ウ:薬師寺ウ
ウ:おのれウ
ウ:力弥ウ
色:〱色
詞:暫時が,ノリ:暫時が詞/ノリ
地:袈裟に,ハル:袈裟に地/ハル