調便婿殿退退殿
調便婿殿退退殿
平がなれの果其身はふ義のあやまりから一味同心も叶はずせめては石牌せきひの連中にと女房売て金調とゝのへ其金故にしうとは討れ金は戻され詮方なく腹切て相果し其時の勘平がさそ無念に有ふ口惜からふ金戻したは由良助が一しやうの誤りふ便ひん最期さいことけさしたと片時忘れすはだはなさず今宵夜討も財布と同道平右衛門そちが為には妹婿焼香せうかうさせよと投やればハヽヽヽヽはつと押いたゝき〱草葉のかげゟ嘸有がたう存ましよ冥加めうかに餘る仕合財布を香爐かうろの上に着二番の焼香早の勘平重氏と高らかに呼はりし声も涙にふるはすれば列座れつざの人も残念の胸も張裂はりさく計也思ひがけなや人馬の音山谷さんこくにひゝく責太鼓せめたいこときをどつとぞ上にける由良助ちつ共さはがず扨は師直が一家の武士取かけしと覚たりつみつくりに何かせんと覚悟かくごの所へ桃井若狭助おくればせにかけ付給ひヤア〱大星今表門より責かけたは師直か弟師安此所で腹切ては敵に恐れしと後代こうだい迄のそしり塩冶殿の御菩提ぼたい所光明寺へ立退のくべしと仰にはつと由良助いか様最期さいごとぐる共亡君はかの前仰にしたがひ立退申さん御殿しつはらひ頼上るといふ間もあらせずいづくに忍び居たりけん薬師寺次郎鷺坂伴内おのれ大星のがさじと右往左往うわうさわうに討てかゝる力弥すかさず請ながし〱暫時ざんじが内は討合しがはづみを打てうつ太刀に袈裟けさにかけ

地:焼香,ハル:焼香地/ハル

中:投やれば

ウ:ハヽヽヽヽ

ウ:財布を

色:上に

詞:二番の

地:高らかに,ハル:高らかに地/ハル

ウ:声も

上:列座の,ウ:列座の上/ウ

ウ:残念の

フシ:胸も,中:胸も,ノル:胸もフシ/中/ノル

ハル:張裂計也ハル

地:思ひがけなや,ハル:思ひがけなや地/ハル

ウ:山谷に

フシ:ときをフシ

地:由良助,ハル:由良助地/ハル

色:ちつ共

詞:扨は

地:罪つくりに,ウ:罪つくりに地/ウ

ハル:おくればせにハル

色:かけ付

詞:ヤア

地:仰に,ハル:仰に地/ハル

色:由良助

詞:いか様

地:いふ,ウ:いふ地/ウ

ハル:居たりけんハル

ウ:薬師寺

ウ:おのれ

ウ:力弥

色:〱

詞:暫時が,ノリ:暫時が詞/ノリ

地:袈裟に,ハル:袈裟に地/ハル