由良助が初太刀にて四十余人が声々に浮木にあへるもう亀は是三千年の優曇花の花を見たりや嬉しやとおどり上り飛上り筐の刀で首かき落し悦びいさんで舞も有妻を捨子に別れ老たる親を失ひしも此首一つ見ん為よけふはいか成吉日ぞと首をたゝいつ喰付つ一同にわつと嬉し泣理り過て哀なり由良助は懐中ゟ亡君の位牌を出し床の間の卓に乗奉り師直が首血汐を清め手向申兜に入し香を炷すさつて三拝九拝し恐ながら亡君尊霊蓮性院見利大居士へ申上奉る去御切腹の其折から跡吊へと下されし九寸五分にて師直が首かき落し御位牌に手向奉る草葉のかげにて御請取下さるべしと涙と倶に礼拝しいざ〱御一人づゝ御焼香先惣大将なれば御自分様よりイヤ拙者より先さきへ矢間重太郎殿御焼香なされイヤ〱それは存も寄ずいづれもの手前と申御贔屓は返つて迷惑イヤ贔屓でござらぬ四十人余の衆中か師直が首取んと一身を抛中に貴殿一人柴部屋ゟ見付出し生捕になされたはよく〱主君塩冶尊霊のお心に叶ひし矢間殿おうらやましう存る何といづれも御尤に存まするそれは何共ハテ扨刻限が延ます然らは御免と一の焼香二番目は由良殿いざお立とすゝむればイヤまた外に焼香の致し人有そりや何者誰人ととへば大星懐中ゟ碁盤嶋の財布取出し是が忠臣二番目の焼香早の勘
由良ノ助が初太刀にて四十余人が声々に浮木にあへるもう亀は是三千年の優曇花の花を見たりや嬉しやとおどり上り飛上り筐の刀で首かき落し悦びいさんで舞も有リ妻を捨子に別れ老たる親を失ひしも此首一トつ見ん為よけふはいか成吉日ぞと首をたゝいつ喰付つ一チ同にわつと嬉し泣理り過キて哀なり由良助は懐中ゟ亡君の位牌を出し床の間の卓に乗セ奉り師直が首血汐を清め手向ケ申シ兜に入レし香を炷すさつて三拝九拝し恐ながら亡君尊霊蓮性院見利大居士へ申上奉る去ル御切ツ腹の其折から跡吊へと下されし九寸五分にて師直が首かき落し御位牌に手向ケ奉る草葉のかげにて御請取リ下さるべしと涙と倶に礼拝しいざ〱御一人づゝ御焼香先ツ惣大将なれば御自分ン様よりイヤ拙者より先さきへ矢間重太郎殿御焼香なされイヤ〱それは存も寄ラずいづれもの手前と申御贔屓は返つて迷惑イヤ贔屓でござらぬ四十人余の衆中か師直が首取ラんと一ツ身を抛中に貴殿ン一人柴部屋ゟ見付ケ出し生ケ捕になされたはよく〱主君塩冶尊霊のお心に叶ひし矢間殿おうらやましう存る何といづれも御尤に存まするそれは何ン共ハテ扨刻限が延ます然らは御免ンと一チの焼香二番目は由良殿いざお立とすゝむればイヤまた外に焼香の致し人有そりや何者誰人ととへば大星懐中ゟ碁盤嶋の財布取出し是が忠臣二番目の焼香早の勘
地:由良助が,ハル:由良助が地/ハル
ウ:四十余人がウ
ウ:浮木にウ
ウ:三千年のウ
ウ:花をウ
色:嬉しやと色
ウ:おどり上りウ
ハル:筐のハル
ウ:悦びウ
中:舞も中
ハル:老たるハル
ウ:此ウ
ウ:首をウ
ウ:わつとウ
フシ:理り,中:理りフシ/中
地色:由良助は,ウ:由良助は地色/ウ
ハル:位牌をハル
ウ:床の間のウ
中:奉り中
ウ:師直がウ
ウ:手向ウ
ハル:兜にハル
フシ:すさつてフシ
地:恐ながら,中:恐ながら地/中
ウ:亡君ウ
ハル:蓮性院ハル
ウ:見利大居士ウ
詞:去詞
地:草葉の,ウ:草葉の地/ウ
ウ:下さるべしとウ
スヱ:涙とスヱ
ハル:倶に,中:倶にハル/中
詞:いざ詞
地:然らは,ウ:然らは地/ウ
フシ:一のフシ
地:二番目は,ハル:二番目は地/ハル
ウ:いざウ
色:すゝむれば色
詞:イヤ詞
地:とへば,ハル:とへば地/ハル
色:取出し色
詞:是が詞