よ添て見よと申せばお馴染ない御旁は氣遣に思召も尤私元は軽い者お国の御用承はつてより経上た此身体判官様の様子承はつて倶に無念何とぞ此恥辱雪やうはないかとりきんで見ても秦亀のじだんだ及ばぬ事と存た所へ由良助様のお頼こそ心得たと向ふ見ず倶にお力付る斗情ないは町人の身の上手一合でも御扶持を戴ましたらば此度の思し立袖つまに取付て成共お供申いづれも様へ息つきの茶水でも汲ませうにそれも叶はぬはよく〱町人はあさましい物是を思へばお主の御恩刀の威光は有がたい物それ故にこそお命捨らるゝ御うらやましう存まする猶もめいどで御奉公お序に義平めが志もお執成とあつき詞に人々も思はず涙催して奥歯かみわる斗也由良助取あへず今晩鎌倉へ出立本望遂るも百日とは過すまし承はれば御内證迄省給ふ由重々のお志追付それも呼かへさせ申さん御不自由も今暫く早お暇と立上るヤレ申さばめで度旅立いづれも様へも御酒一ついやそれはハテ扨いはふて手打の蕎麦切ヤ手打とは吉相然らば大鷲矢間御両人は跡に残り先手組の人々は郷右衛門力弥を誘ひ佐田の森迄お先へいざこなたへと亭主か案内お辞義は無礼と由良助二人を伴ひ入月と又出る月と二つ輪の親と
よ添て見よと申せばお馴染ない御旁は氣遣イに思召スも尤私元トは軽い者お国の御用承はつてより経上ツた此身ン体判官様の様子承はつて倶に無念ン何とぞ此恥辱雪やうはないかとりきんで見ても秦亀のじだんだ及ばぬ事と存た所へ由良ノ助様のお頼こそ心得たと向ふ見ず倶にお力付ケる斗情ないは町人の身の上手一チ合でも御扶持を戴ましたらば此度の思し立袖つまに取付イて成共お供申いづれも様へ息つきの茶水でも汲ませうにそれも叶はぬはよく〱町人はあさましい物是を思へばお主の御恩刀の威光は有がたい物それ故にこそお命捨らるゝ御うらやましう存まする猶もめいどで御奉公お序に義平めが志もお執成とあつき詞に人々も思はず涙催して奥歯かみわる斗也由良ノ助取あへず今晩鎌倉へ出立本望遂るも百日とは過すまし承はれば御内證迄省給ふ由重々のお志追ツ付それも呼かへさせ申さん御不自由も今暫く早お暇と立上るヤレ申さばめで度旅立いづれも様へも御酒一ついやそれはハテ扨いはふて手打の蕎麦切ヤ手打とは吉相然らば大鷲矢間御両人は跡に残り先キ手組の人々は郷右衛門力弥を誘ひ佐田の森迄お先キへいざこなたへと亭主か案内お辞義は無礼と由良ノ助二人を伴ひ入月と又出る月と二つ輪の親と
地色:情ないは,中:情ないは地色/中
ハル:身の上ハル
ウ:手ウ
ウ:此ウ
ウ:袖ウ
ウ:茶ウ
中:汲ませうに中
詞:それも詞
地:それ,ハル:それ地/ハル
ウ:お命ウ
ウ:御うらやましうウ
色:存まする色
ウ:猶もウ
ハル:御奉公ハル
ウ:お序にウ
ウ:志もウ
ウ:あつきウ
上:思はず上
キン:催してキン
フシ:奥歯,中:奥歯,ノル:奥歯フシ/中/ノル
ハル:かみわる斗也ハル
地色:由良助,ハル:由良助地色/ハル
色:取あへず色
詞:今晩詞
地色:御不自由も,ハル:御不自由も地色/ハル
フシ:早フシ
地:ヤレ,ハル:ヤレ地/ハル
ウ:いづれもウ
詞:いや詞
地色:いざ,ハル:いざ地色/ハル
ウ:お辞義はウ
中:由良助中
ヲクリ:二人をヲクリ
中:月と中
ハルフシ:又ハルフシ
中:月と中
ウ:親とウ