調退
大船の船頭せんどでござる舟ちん算用さんようちかふたちよつと明て下されハテ仰山げうさんなわつかな事であろ明日あす来た〱イヤ今夜うける船仕切もらはにや出されませぬといふもこは高近所の聞へと義平は立出何心なく門の戸を明と其侭とつた〱うごくな上意とおつ取まくコハ何故と四方八方眼をくばれば捕手とりての両人ヤア何故とは横道わうたう者儕塩冶判官が家来大星由良助に頼れ武具ふぐ馬具ばくかひ調とゝのへ大廻しにて鎌倉へ遣はす条急召捕拷問かうもんせよとの御上意のがれぬ所じやうで廻せ是は思ひも寄ぬおとがめ左様の覚へいさゝかなし定てそれは人たがへといはせも立ずヤアぬかすまいあらそはれぬ證拠しやうこ有ソレ家来共はつと心得持来るは宵につんだる茣蓙荷ござにの長持見るより義平は心も空ソレ動すなと四方のじつてい其間に荷物を切ほどき長持明んとする所を飛かゝつて下蹴退けのけふたの上にどつかとすはりヤア麁忽そこつ千万此長持の内に入置たは去大名の奥方よりおあつらへのお手道具お具足櫃ぐそくびつの笑ひ本笑ひ道具の注文ちうもん迄其名をしるしたれば明さしてはれき々のお家のお名の出る事御らん有てはいづれものお身の上にもかゝりませうぞヤアいよ〱胡乱うろん者中々大ていでは白状致すまいそれ申合せた通合点でござると一間へかけ入一子よし松を引立出サア義平長持の内はとも有塩冶浪

地色:いふも,ウ:いふも地色/ウ

ウ:義平は

ハル:門のハル

ウ:明と

色:動くな

ウ:コハ

ウ:眼を

ハル:捕手のハル

色:両人

詞:ヤア

地色:定て,ウ:定て地色/ウ

ハル:いはせもハル

詞:ヤア

地色:はつと,ハル:はつと地色/ハル

ウ:宵に

ウ:見るより

ウ:ソレ

中:じつて

ウ:其間に

ウ:長持

ハル:するハル

ウ:飛

ウ:蓋の

色:すはり

詞:ヤア

地色:合点で,ウ:合点で地色/ウ

ハル:一間へハル

ウ:一子

色:引立

詞:サア