殿婿
殿婿
思案しあんする程いやかどふじやふ得心とくしんなら此方にも片時れず戻すからは此了竹もにぢり込へたばつてとも役介やつかいいやかおうかの返答へんたうと込付られてさすかの義平工に乗が口おしやと思へどこちらの一大事見出されてはとかけすゝりて引寄さら〱と書したゝめ是やるからは了竹殿親でなし子てなしかさね足踏あしふみやんな底工そこたくみいとまの状よはみをくふてやるか残念さんねんていきやれと投れば手早く取懐中くはいちうしヲヽよい推量すいりやう聞ば此間ゟ浪人共が入込ひそめくよりそのめにとへ共しらぬとぬかす何仕出さふも知ぬ婿娘をそはして置が氣遣れき〱からもらひかけられ去状取と直に嫁入さする相談さうだん一ばいまいつて重畳ちやうしやうホウたとへ状なき迚も子迄なしたる夫を捨外へする性根しやうねなら心は残らぬ勝手〱ヲヽ勝手にするは親のこうけ今宵の内に嫁らするヤアこまことはかずと早帰れとかた先つかんで門口より外出して跡ひつしやりほう〱おきてコリヤ義平なんぼ掴でほり出しても嫁らす先から仕拵しこしらへ金あたゝまつてられたりやどふやら疝氣せんきが直つたと口は達者に足腰もでつさすりつ逃ほへにつぶやき〱立帰る月のくもりにかげ隠す隣家りんかも寝入刻過こくき此家を目がけて捕手とりての人数じつてい早なは挑燈ちやうちん火かげを隠してうかゞひ〱犬とおほしき家来をまねき耳打すれば指心得門の戸せはしく打たゝく誰じや〱も及びごしイヤよひにきた

詞:いやか

地:込,ウ:込地/ウ

ウ:工に

ウ:思へど

ハル:見出されてはとハル

中:かけ硯

ウ:取て

フシ:書フシ

詞:是や

地:手早く,ハル:手早く地/ハル

色:懐中

詞:ヲヽ

地:かた先,ウ:かた先地/ウ

ハル:門口よりハル

ウ:外へ

ウ:ほう〱

詞:コリヤ

地:口は,ハル:口は地/ハル

中:逃ほへに

ヲクリ:つぶやきヲクリ

地色:月の,ウ:月の地色/ウ

ウ:隣家も

ハル:亥の刻ハル

ウ:此

ウ:じつてい

中:腰挑燈

ウ:火かげ

ウ:犬と

ウ:耳打

ハル:門のハル

中:打たゝく

色:誰じや

ハル:及びごしハル

詞:イヤ