調殿竿殿
あほうめがしやなり声と言つゝ出てヱ郷右衛門様力弥様サアまあ是へ御免あれと座をしめて郷右衛門段々貴公きこうのお世話せわ故万事相調とゝのひ由良助もお礼に参るはづれ共鎌倉へ出立も今明日何角なにかと取せがれ力弥を名代として失礼しつれいのおことはり是は〱御念の入た義急に御發足ほつそくとござりますれば何角お取込でござりませうに成程郷右衛門殿の仰の通明早々出立の取込自由じゆうなから私に参りお礼も申又お頼た跡荷物にもついよ〱今晩でつみ仕廻かお尋申せと申渡しましてござります成あつらへかの道具一まき段々大廻しでつかは小手こて臑当すねあて小道具の類は長持仕込しこみ以上七竿さほばん出船を幸船頭せんどうへ渡し残るは忍び挑燈ちやうちんくさり鉢巻はちまき是は陸荷おかに跡より遣はすつもりでござります郷右衛門様お聞なされましたかいかゐお世話せわでござりまするいか様主人塩冶公の御おんを請た町人もおゝござれ共天河屋の義平は武士も及ばぬ男氣な者と由良殿が見込大事をお頼申されたも尤しかしやり薙刀なぎなた格別かくべつくさりかたひら継梯子つきはしごのと申物はつねならぬ道具お買なさるゝに不思議しぎは立ませなんだかなイヤ其義は細工人へ手前の所は申さず手付を渡し金と引かへに仕る故いづくの誰と先様には存ませぬ成程尤次手に力弥めもお尋申ましよ内へ道具を取込荷物にもつこしらへ

地:言つゝ,ハル:言つゝ地/ハル

詞:ヱ

地:御免,ウ:御免地/ウ

ハル:座をハル

色:郷右衛門

詞:段々