コリヤあすの夜舟に下るべし我は幸本蔵殿の忍び姿を我姿とけさ打かけて編笠に恩を戴報謝返し未来の迷ひ晴さん為今宵一夜は嫁御寮へ舅が情のれんほ流哥口しめして立出れば兼て覚悟のお石が歎御本望をと斗にて名残惜さの山々をいはぬ心のいぢらしさ手負は今を知死期時とゝ様申とゝ様とよべど答へぬだんまつま親子の縁も玉の緒も切て一世のうき別れわつと泣母泣娘倶に死骸に向ひ地の回向念仏は恋無常出行足も立留り六字の御名を笛の音になむあみだ仏なむあみだ是や尺八ぼんのふの枕ならぶる追善供養閨の契は一夜ぎり心残して立出る第十津の国と和泉河内を引請て餘所の国迄船よせる三国一の大湊堺といふて人の氣も賢き町に疵もなき天河屋の義平とて金から金を設溜見かけは軽く内證は重い暮に重荷をば手づから見世でしめくゝり大船の船頭是でてうど七竿請取ましたと指荷ひ行も黄昏亭主はほつと日和もよしよい出船といひつゝたばこきせる筒すい付にこそ入にけれ家の世継は今年四つもりは十九の丸額親方よりも我遊びサア始りじや〱
コリヤあすの夜舟に下るべし我は幸イ本蔵殿の忍び姿を我姿とけさ打かけて編笠に恩を戴報謝返し未来の迷ひ晴さん為今宵一チ夜は嫁御寮へ舅が情のれんほ流哥口しめして立出れば兼て覚悟のお石が歎キ御本望をと斗にて名残惜シさの山々をいはぬ心のいぢらしさ手負は今を知死期時とゝ様申シとゝ様とよべど答へぬだんまつま親子の縁ンも玉の緒も切レて一ツ世のうき別れわつと泣ク母泣娘倶に死骸に向ひ地の回向念仏は恋無常出行足も立留り六字の御名を笛の音になむあみだ仏なむあみだ是や尺八ぼんのふの枕ならぶる追善供養閨の契は一ト夜ぎり心残して立出る第十津の国と和泉河内を引請ケて餘所の国迄船よせる三国一チの大湊堺といふて人の氣も賢き町に疵もなき天河屋の義平とて金から金を設溜見かけは軽く内證は重い暮に重荷をば手づから見世でしめくゝり大船の船頭是でてうど七竿請取ましたと指荷ひ行も黄昏亭主はほつと日和もよしよい出船といひつゝたばこきせる筒すい付ケにこそ入にけれ家の世継は今年シ四つもりは十九の丸額親方よりも我遊びサア始りじや〱
地:あすの,ウ:あすの地/ウ
ウ:我はウ
ハル:姿とハル
ウ:けさウ
中:編笠に中
ウ:恩をウ
詞:今宵詞
地:哥口,ハル:哥口,ウ:哥口地/ハル/ウ
ウ:兼てウ
ウ:お石がウ
上:御本望をと斗にて,ウ:御本望をと斗にて上/ウ
ウ:山々をウ
フシ:いぢらしさフシ
地:手負は,中:手負は地/中
ハル:今をハル
ウ:とゝ様ウ
クル:答へぬクル
ウ:親子のウ
ウ:玉の緒もウ
中:一世の中
フシ:うき,カヽリ:うきフシ/カヽリ
ハル:わつとハル
ウ:倶にウ
ウ:回向ウ
ウ:恋ウ
ウ:出ウ
上:六字の上
詞:なむあみだ仏詞
地:なむあみだ,上:なむあみだ,ウ:なむあみだ地/上/ウ
ウ:尺八ウ
クル:枕クル
ウ:追善ウ
ウ:閨のウ
中:心中
上:残して上
三重:立出る,上:立出る三重/上
地:津の国と,ハル:津の国と地/ハル
ウ:餘所のウ
ウ:大湊ウ
ウ:堺とウ
ウ:賢きウ
中:疵も中
ウ:天河屋のウ
ウ:設ウ
ハル:見かけはハル
ウ:重荷をばウ
ウ:手づからウ
中:船頭中
詞:是で詞
地:請取ましたと,ハル:請取ましたと地/ハル
ウ:行もウ
中:ほつと中
ウ:日和もウ
ハル:いひつゝハル
フシ:すい付にこそフシ
地:家の,中:家の地/中
ウ:今年ウ
ハル:親方よりもハル
詞:サア詞