師直障子襖は皆尻ざし雨戸に合栓合樞こぢてははづれずかけやにてこぼたば音して用意せんかそれいかゞヲヽ夫にこそ術あれ凝ては思案にあたはずと遊所よりの帰るさ思ひ寄たる前栽の雪持竹雨戸をはづす我工夫仕様を爰にて見せ申さんと庭に折しも雪ふかくさしもに強き大竹も雪の重さにひいわりとしはりし竹を引廻して鴨居にはめ雪にたはむは弓同然此ごとく弓を拵へ弦を張鴨居と敷居にはめ置て一度に切て放つ時はまつ此やうにと積つたる枝打はらへば雪ちつてのびるは直成竹の力鴨居たわんでみぞはづれ障子残らずばた〱〱本蔵くるしさ打忘れハヽアしたり〱計略といひ義心といひかほどの家来を持ながら了簡も有べきにあさきたくみの塩冶殿口惜き振廻やと悔を聞に御主人の御短慮成御仕業今の忠義を戦場のお馬先にて盡さばと思へば無念にとぢふさがる胸は七重の門の戸を洩るは涙斗也力弥はしづ〱おり立て父が前に手をつかへ本蔵殿の寸志により敵地の案内知たる上は泉刕堺の天河屋儀平方へも通達し荷物の工面仕らんと聞もあへず何さ〱山科に有事隠れなき由良助人数集めは人目有一先堺へ下つて後あれから直に發足せん其方は母嫁となせ殿諸共に跡の片付諸事万事何もかも心残りのなき様にナナ
師直障子襖は皆尻ざし雨戸に合栓合イ樞こぢてははづれずかけやにてこぼたば音トして用意せんかそれいかゞヲヽ夫レにこそ術あれ凝ては思案にあたはずと遊所よりの帰るさ思ひ寄ツたる前栽の雪持ツ竹雨戸をはづす我工夫仕様を爰にて見せ申さんと庭に折しも雪ふかくさしもに強き大竹も雪の重さにひいわりとしはりし竹を引廻して鴨居にはめ雪にたはむは弓同然此ごとく弓を拵へ弦を張鴨居と敷キ居にはめ置キて一チ度に切ツて放つ時はまつ此やうにと積つたる枝打はらへば雪ちつてのびるは直ク成ル竹の力鴨居たわんでみぞはづれ障子残らずばた〱〱本蔵くるしさ打忘れハヽアしたり〱計略といひ義心ンといひかほどの家来を持ながら了簡も有べきにあさきたくみの塩冶殿口惜き振廻イやと悔を聞に御主人の御短慮成ル御仕業今の忠義を戦場のお馬先にて盡さばと思へば無念にとぢふさがる胸は七重の門の戸を洩るは涙斗也力弥はしづ〱おり立て父が前に手をつかへ本蔵殿の寸ン志により敵地の案内知レたる上は泉刕堺の天河屋儀平方へも通達し荷物の工面仕らんと聞キもあへず何さ〱山科に有ル事隠れなき由良ノ助人数集めは人目有一ト先ツ堺へ下つて後チあれから直クに發足せん其方は母嫁となせ殿諸共に跡の片付キ諸事万ン事何もかも心残りのなき様にナナ
地:ヲヽ,ウ:ヲヽ地/ウ
色:術色
詞:凝ては,ノリ:凝ては詞/ノリ
地:仕様を,ハル:仕様を地/ハル
ウ:爰にてウ
ウ:見せウ
ヲクリ:庭にヲクリ
中:折しも中
ウ:さしもにウ
ウ:大竹もウ
トル:雪のトル
ハル:ひいわりとハル
ウ:しはりしウ
ウ:鴨居にウ
中:雪に,キン:雪に中/キン
色:弓色
詞:此,ノリ:此詞/ノリ
地色:まつ,ハル:まつ地色/ハル
ウ:枝ウ
ウ:雪ウ
中:ちつて中
キン:のびるはキン
ハル:竹のハル
ウ:鴨居ウ
ウ:障子ウ
ウ:本蔵ウ
色:したり色
詞:計略と詞
地色:あさ,ハル:あさ地色/ハル
ウ:口惜きウ
ウ:悔をウ
上:御仕業上
ウ:今のウ
ウ:お馬先にてウ
ウ:盡さばとウ
ウ:思へばウ
ウ:胸はウ
フシ:門のフシ
中:洩るは,ノル:洩るは中/ノル
ハル:涙斗也ハル
地:力弥は,ハル:力弥は地/ハル
詞:本蔵殿の詞