殿殿婿鹿婿殿退
いかぬこりやどふじやととがむる女房ヤアざは〱と見ぐるしい始終しゞうの子細皆聞たそち達にしらさず爰へきた様子は追て先だまれ其元が由良助殿御内證ないしやうお石殿よな今日の時宜しぎかくあらんと思ひ妻子にもしらせす様子をうかゞふ加古川本蔵あんに違はず拙者が首婿引出にほしいとなハヽヽヽヽいやはやそりや侍のいふ事主人のあたむくはんといふ所存もなく遊興ゆうけうにふけり大酒に性根しやうねを乱し放埒ほうらつ身持日本一のあほうのかゞみかいるの子は蛙に成親におとらぬ力弥めが大だはけうろたへ武士のなまくらはがね此本蔵が首は切馬鹿ばかつくすなと踏砕ふみくだわれ三方のふちはなれこつちから婿に取ぬちよこざいな女めと云せも果ずヤア過言くはごんなぞ本蔵殿浪人のさひ刀切るか切ぬかあんばい見せう不祥ふせうながら由良助が女房望む相手じやサア勝負しやうぶ〱〱とすそ長押なげしにかけたるやりつゝかゝらんず其氣色けしき是は短氣たんきなマア待てととゞめへだつる女房娘邪魔じやまひろぐなとあらけなく右と左へ引退のくる間もあらせず突かくる鑓のしほ首引つかみもぢつてはらへば身をそむ諸足もろあしぬはんとひらめかすはむねをけつて蹴上ればこぶしはなれて取落す鑓うばはれしと走腰際こしぎは帯際引つかみどふど打付うごかせずひざにひつ敷強氣がうきの本蔵しかれてお石が無念のがみ親子は

詞:ヤア

地色:破,ウ:破地色/ウ

ハル:こつちからハル

ウ:ちよこざいな

色:云せも

詞:ヤア

地:望む,ハル:望む地/ハル

ウ:〱

中:裾

ウ:長押に

ハル:其ハル

ウ:是は

ウ:とゞめ

色:女房

詞:邪魔,ノリ:邪魔詞/ノリ

地色:鑓,ウ:鑓地色/ウ

ハル:引掴ハル

ウ:どふど

色:本蔵

ウ:しかれて

ウ:無念の