殿殿
殿殿
死だ跡で爺御てゝこへ云訳してたもやアノ勿体もつたいない事おつしやります殿御にきらはれわたしこべきはづてお世話に成上にを見せまする不孝ふかう者母様の手にかけてわたしを殺して下さりませさられても殿御の内爰で死れば本望じや早う殺して下さりませヲツヲよういやつたてかしやつたそなた斗殺しはせぬ此母も三の供そなたをおれが手にかけて母も追付跡から行覚悟かくごはよいかと立派りつぱにも涙とゞめて立かゝりコレ小浪アレあれきや表虚無僧こもそうの尺八つる巣籠すごもりてうるい類でさへ子を思ふにとかもない子を手にかけるは因果ゐんぐはと因果の寄合と思へば足も立かねてふるふこぶしやう〱にふり上る刀の下尋常じんじゃうに座をしめ手を合せなむあみだ仏ととなふる中より御無用と声かけられて思はずもたるみしこぶし尺八もともにひつそとしづまりしがヲヽそふじや今御無用ととゞめたは虚無僧こもそうの尺八よな助たいが山々で無用といふに氣おくれし未練みれんなと笑はれな娘覚悟かくごよいかやと又ふり上る又吹出すとたんの拍子ひやうしに又御無用ムヽ又御無用ととゞめたはしゆの手の内かふり上た手の内かイヤお刀の手の内御無用せがれ力弥に祝言させうヱヽそふいふ声はお石様そりや真実しんじつか誠かと尋るふすまの内よりもあひに相生あひおひの松こそめでたかりけれと祝義の小謡こうたひ白木の小四方目八分たつさへ出義理有中の一娘殺さふと迄思ひ

ウ:爺御へ

色:してたもや

詞:アノ

地:生て,ハル:生て地/ハル

ウ:不孝者

ウ:母様の

ウ:わたしを

ウ:さられても

ウ:爰で

ウ:早う

色:下さりませ

詞:ヲツヲ

地:覚悟は,ハル:覚悟は地/ハル

フシ:立派にもフシ

中:涙,ノル:涙中/ノル

ハル:とゞめてハル

詞:コレ

地:鳥類でさへ,ウ:鳥類でさへ地/ウ

ハル:科もないハル

ウ:子を

上:因果と

ウ:因果の

ウ:思へば

キン:立兼て,中:立兼てキン/中

ハル:漸にハル

ウ:ふり上る

詞:なむあみだ仏と

地:唱る,ウ:唱る地/ウ

ハル:御無用とハル

ウ:声

ウ:たるみし

フシ:倶にフシ

詞:ヲヽ

地色:娘,ハル:娘地色/ハル

ウ:又

詞:ムヽ

地:そりや,ハル:そりや地/ハル

中:内

ウタ:あひにウタ

地:祝義の,ウ:祝義の地/ウ

ウ:白木の

ハル:小四方ハル

フシ:目八分にフシ

詞:義理