は扨置一万石違ふても心と心が釣あへば大身の娘でも嫁に取まい物でもないムヽこりや聞所お石様心と心が釣合ぬとおつしやるはどの心じやサア聞ふ主人塩冶判官様の御生害御短慮とは云ながら正直をもとゝするお心より發し事それに引かへ師直に金銀を以て媚諂ふ追従武士の禄を取本蔵殿と二君に仕へぬ由良助か大事の子に釣合ぬ女房は持されぬと聞もあへず膝立直し諂ひ武士とは誰が事様子によつては聞捨られぬそこを赦すが娘のかはゐさ夫に負るは女房の常祝言有ふが有まいが云号有からは天下晴ての力弥が女房ムヽ面白い女房ならば夫がさる力弥にかはつて此母がさつた〱と云放し心隔の唐紙をはたと引立入にける娘はわつと泣出し折角思ひ思はれて云号した力弥様に逢せてやろとのお詞を便に思ふてきた物を姑御のどうよくにさられる覚はわたしやない母様どふそ詫言して祝言させて下さりませと縋り歎けば母親は娘の顔をつく〲と打ながめ〱親の欲目かしらね共ほんにそなたの器量なら十人並にもまさつた娘よい聟をがなと詮義して云号した力弥殿尋てきたかひもなう婿にしらさずさつたとは義理にもいはれぬお石殿姑去は心得ぬムヽ〱扨は浪人の身のよるべなう筋目を云立有徳な町人の婿に成て義
は扨置キ一チ万ン石違ふても心と心が釣あへば大身の娘でも嫁に取ルまい物でもないムヽこりや聞キ所お石様心と心が釣合ぬとおつしやるはどの心じやサア聞ふ主人塩冶判官様の御生害御短慮とは云ながら正直キをもとゝするお心より發し事それに引かへ師直に金銀を以ツて媚諂ふ追従武士の禄を取本蔵殿と二君に仕へぬ由良ノ助か大事の子に釣合ぬ女房は持されぬと聞もあへず膝立テ直し諂ひ武士とは誰が事様子によつては聞捨られぬそこを赦すが娘のかはゐさ夫トに負るは女房の常祝言有ふが有まいが云号有ルからは天下晴ての力弥が女房ムヽ面白い女房ならば夫トがさる力弥にかはつて此母がさつた〱と云放し心隔の唐紙をはたと引立入にける娘はわつと泣出し折角思ひ思はれて云号した力弥様に逢せてやろとのお詞を便リに思ふてきた物を姑御のどうよくにさられる覚はわたしやない母様どふそ詫言して祝言ンさせて下さりませと縋り歎けば母親は娘の顔をつく〲と打ながめ〱親の欲目かしらね共ほんにそなたの器量なら十人並にもまさつた娘よい聟をがなと詮義して云号した力弥殿尋てきたかひもなう婿にしらさずさつたとは義理にもいはれぬお石殿姑去リは心得ぬムヽ〱扨は浪人の身のよるべなう筋目を云立テ有徳な町人の婿に成ツて義
地:釣合ぬ,ウ:釣合ぬ地/ウ
ハル:聞もハル
色:膝色
詞:諂ひ詞
地色:祝言,ウ:祝言地色/ウ
ハル:有まいがハル
ウ:云号ウ
色:女房色
詞:ムヽ詞
地:〱,ハル:〱地/ハル
ウ:心ウ
フシ:はたとフシ
地:娘は,ハル:娘は地/ハル
ウ:折角ウ
ウ:云号ウ
ウ:逢せてウ
ウ:きたウ
上:姑御の上
詞:さられる詞
地:母様,ハル:母様地/ハル
ウ:詫言ウ
上:祝言上
スヱ:縋りスヱ
中:母親は中
ウ:娘のウ
ハル:つく〲とハル
ウ:打ながめウ
中:〱中
ハル:親のハル
ウ:ほんにウ
ウ:十人並にもウ
ウ:まさつたウ
中:娘中
ウ:よいウ
ウ:云号ウ
ハル:力弥殿ハル
ウ:尋てウ
ウ:かひもウ
上:婿に上
色:さつたとは色
ハル:義理にもハル
ウ:いはれぬウ
ウ:姑去は心ウ
色:心得ぬ色
詞:ムヽ詞