聞へぬ迄行過させ由良助枕を上ヤア力弥遊興に事寄丸めた此雪所存有ての事じやが何と心得たぞハツ雪と申物は降時には少の風にも散軽い身でござりませう共あのごとく一致して丸まつた時は嶺の雪吹に岩をも砕く大石同然重いは忠義其重い忠義を思ひ丸めた雪も余り日数を延過してはと思召てのイヤ〱由良助親子原郷右衛門など四十七人連判の人数はナ皆主なしの日かげ者日かげにさへ置は解ぬ雪せく事はないといふ事爰は日当り奥の小庭へ入て置蛍を集め雪を積も学者の心長き例女共切戸内から明てやりやれ堺への状認めん飛脚がきたらばしらせいよアイ〱間の切戸の内雪こかし込戸を立る襖引立入にける人の心の奥深き山科の隠家を尋て爰に来人は加古川本蔵行国が女房となせ道の案内の乗物をかたへに待せ只一人刀脇指さすがげに行義乱さず庵の戸口頼ませう〱と云声に襷はづして飛で出る昔の奏者今のりんどうれといふもつかうど成ハツ大星由良助様お宅は是かな左様ならば加古川本蔵が女房となせでござります誠に其後は打絶ましたちとお目にかゝりたい様子に付遥々参りましたと伝られ
聞へぬ迄行過キさせ由良ノ助枕を上ケヤア力弥遊興に事寄セ丸めた此雪所存ン有ツての事じやが何ンと心得たぞハツ雪と申ス物は降時には少シの風にも散軽い身でござりませう共あのごとく一致して丸まつた時は嶺の雪吹に岩をも砕く大石同然重いは忠義其重い忠義を思ひ丸めた雪も余り日数を延過してはと思召シてのイヤ〱由良ノ助親子原郷右衛門など四十七人連ン判の人ン数はナ皆主なしの日かげ者日かげにさへ置ケは解ぬ雪せく事はないといふ事爰は日当り奥の小庭へ入て置ケ蛍を集め雪を積も学者の心長き例女共切戸内から明ケてやりやれ堺への状認めん飛脚がきたらばしらせいよアイ〱間イの切戸の内雪こかし込戸を立る襖引立入にける人の心の奥深き山科の隠レ家を尋て爰に来ル人は加古川本蔵行国が女房となせ道の案内の乗リ物をかたへに待タせ只一人刀脇指さすがげに行義乱さず庵の戸口頼ませう〱と云声に襷はづして飛ンで出る昔の奏者今のりんどうれといふもつかうど成ルハツ大星由良ノ助様お宅は是かな左様ならば加古川本蔵が女房となせでござります誠に其後チは打絶ましたちとお目にかゝりたい様子に付キ遥々参りましたと伝られ
ハル:由良助ハル
色:枕を色
詞:ヤア詞
地:堺への,ウ:堺への地/ウ
詞:飛脚が詞
地:間の,ハル:間の地/ハル
中:雪中
ハル:立るハル
ヲクリ:襖ヲクリ
地:人の,ウ:人の地/ウ
ウ:奥深きウ
ウ:山科のウ
ウ:尋てウ
ハル:来ハル
ウ:加古川ウ
ウ:行国がウ
ウ:道のウ
中:只中
ウ:刀ウ
ウ:さすがウ
ウ:行義ウ
ハル:庵の,フシ:庵のハル/フシ
詞:頼ませう詞
地:襷,ハル:襷地/ハル
ウ:昔のウ
フシ:どうれとフシ
詞:ハツ詞