殿
さつたとうげにさしかゝり見返れば不二ふしけむりの空にきへ行衛もしれぬ思ひをばはらす嫁入の門火ぞといはふて三保の松原につゞくなみ街道かいだうをせましと打たる行烈きやうれつは誰としらねど浦山しアヽ世が世ならあのごとく一度のはれと花かざり伊達だてをするがの府中ふちう過城下過ればきさんじに母の心もいそ〱と二世のさかづき済で後ねやのむつごとさゝめ言親しらず子しらずとつたほそ道もつれ合嬉しからふと手を引ばアノ母様のさし合をわきへこかして鞠子まりこ川うつの山辺のうつゝにも殿御始の新枕にいまくらせとの染飯そめいゝこはゐやら恥しいやら嬉しいやらあんじてむねも大井川水の流れと人心もしや心はかはらぬか日かげに花さかぬかといふて嶋田のうさはらし二人我身の上をかくとだに人しらすかの橋こへて行ば吉田や赤坂のまねく女の声そろへ縁をむすばゝ清水寺へ参らんせ音羽おとはの瀧にざんぶりざ毎日そふいふておがまんせそふじやいなししきがんかうがかいれいにうきうかぐら太鼓たいこにヨイコノヱイこちのひるねをさまされた都とのごにあふてつらきが語りたやソウトモ〱もしも女夫とかゝさまならば伊勢さんの引合ひなびた哥も身に取てよい吉相きつさうになるみ

ハツミ:さつた峠ハツミ

上:不二の煙

サハリ:空に,ウ:空にサハリ/ウ

ウキン:行衛もウキン

中:思ひをば

ナヲス:はらす,ハル:はらすナヲス/ハル

フシ:門火ぞとフシ

ウ:松原に

小ヲクリ:つゞ小ヲクリ

ウ:せましと

ウ:行烈は

トル:誰とトル

ウ:浦山しアヽ

地:アヽ,ウ:アヽ地/ウ

色:あの

ウ:一度の

ハル:花かざりハル

二人:伊達を二人

ウ:府中

ウキン:城下ウキン

フシ:母のフシ

ウ:心も

中:二世の

ウ:済で後

本フシ:閨の,ハル:閨の本フシ/ハル

中:さゝめ言親

ウ:親しらず

ウ:蔦の

キン:細道キン

フシ:嬉しからふと手フシ

地:アノ,中:アノ地/中

ウ:わきへ

ウ:うつの

ハル:殿御ハル

中:新枕

ウ:染飯

ハル:こはゐやらハル

ウ:恥しいやら嬉し

ウ:嬉しいやら案

ウ:案じて

ウ:大井川水

ウキン:水のウキン

上:もしや

中:かはらぬ

ハル:日かげ,ウ:日かげハル/ウ

ウ:中:咲ウ:中

フシ:いふてフシ

ハル:うさはらハル

二人:我身,ハルフシ:我身二人/ハルフシ

中:人

ハル:赤坂のハル

ウ:女の

二上り:縁を,歌:縁を二上り/歌

キン:清水寺へキン

中:参らんせ

ハル:音羽の,ウ:音羽のハル/ウ

ハルキン:ざんぶりざハルキン

ウ:おがまんせ

下:そふじやいな

合:ししき,ハル:ししき,ウ:ししき合/ハル/ウ

ウ:れいにうきう

合:かぐら,ウ:かぐら合/ウ

色:ヨイ

合:こちの,ハル:こちの,ウキン:こちの合/ハル/ウキン

合:都,上:都合/上

色:ソウトモ

ハル:もしもハル

下:かゝさま

ハル:ならばハル

ナヲス:ひなびた,ハル:ひなびた,フシ:ひなびたナヲス/ハル/フシ

中:身に

ウ:なるみ