殿殿殿
右衛門最前さいぜんさび刀をわすれ置たはこいつをばなぶり殺しといふしらせ命とらずと苦痛くつうせよ⊗かしこまつたとぬくより早くおどり上り飛上り切共わづか二三寸明所もなしにきずだらけ⊗のた打廻つて平右殿おかる殿わびしてたべと手を合せ以前足軽あしがるづれなりと目にもかけざる寺岡に三ぱいするぞ見ぐるしき⊗此で殺さば云訳いひわけむつかしくらひゑふたていにしてやかたへ連よと羽織はおり打きせきずのくち⊗かくれ聞たるさま崎竹森が障子しやうじくはらりと引明⊗由良助殿段々あやまり入ましてござります⊗それ平右衛門くらひゑふた其きやく加茂かも川でナ水ざうすいをくらはせい⊗ハア⊗イケ第八道行旅路の嫁入浮世とはたがいひそめて飛鳥あすか川ふちも知行ちきやうとかはりよるべもなみしたひとむす塩冶ゑんやあやまりは恋のかせくい加古川の小浪こなみ云号いひなづけ結納たのみもとらず其まゝに振すてられし物思ひ母の思ひは山しなむこ力弥りきやをちからにて住家すみかおして嫁入も世に有なしの義理遠慮ゑんりよこしもとつれず乗物もやめて親子の二人連都の空に心ざす雪のはだへもさむ空は寒紅梅かんこうばいの色そひて手先覚へずこゞゑ坂

地:畏たとぬくより,ハル:畏たとぬくより地/ハル

ウ:踊上り飛上

ウ:明所

ウ:のた打廻つて平

詞:平右殿

地色:詫し,ハル:詫し地色/ハル

ウ:以前は

ウ:目にも

フジ:三拝,中:三拝フジ/中

ハル:見ぐるしハル

詞:此場

地:館へ,ハル:館へ地/ハル

中:疵の

ハル:かくハル

ウ:障子

色:引明⊗由

詞:由良助殿段

ハル:浮世とは,ウ:浮世とはハル/ウ

ウ:たが

中:飛鳥川,フシ:飛鳥川中/フシ

中:ふちも

スヱテ:よるべもスヱテ

ハル:浪の下ハル

中:下人に

ウ:云号結納も

ウ:結納も,ヲクリ:結納もウ/ヲクリ

ウ:其儘

ハル:物思ひ母ハル

長地:母の,ウ:母の長地/ウ

ウ:聟の

ウ:ちから

ウ:住家へ

中:世に

ウ:妼

ウ:やめて

中:二人連都

フシ:都の,ヲクリ:都の,ユリ:都のフシ/ヲクリ/ユリ

ハルフシ:雪のハルフシ

中:さむ空

ウキン:寒紅梅のウキン

中:手先

ウ:こゞゑ