殿便殿
こりかたまつた由良助殿勘平が女房としらねば請出す義理もなし元来もとより色には猶ふけらず見られた状か一大事請出差殺さしころ思案しあんそこたしかに見へたよしそふなうてもかべみゝ外よりもれても其方がとが蜜書みつしよのそき見たるがあやまり殺さにやならぬ人手にかきよより我手にかけ大事を知たる女妹とてゆるされずとそれをこうに連判の数に入てお供に立少身せうしん者の悲しさは人にすぐれた心ていを見せねば数には入られぬ聞分て命をくれ死でくれ妹と事を分たる兄の詞⊗おかるは始終しゞうせき上〱便のないは身のしろを役に立ての旅立か暇乞いとまごひにも見へそな物とうらんでばかりおりました勿体もつたいないがとゝ様は非業ひこうの死でもお年の上勘平殿は三十に成やならずに死るのはさぞ悲しかろ口おしかろ逢たかつたて有ふのになぜ逢せては下さんせぬ親夫精進せうじんさへしらぬはわたしが身の因果ゐんぐは何の生ておりませうお手にかゝらばかゝさんがおまへをおうらみなされましよ自害じがいした其跡で首なりと死骸しかいなりとこうなら功にさんせさらばでこざる兄様といひつゝかたな取上る⊗やれまてしばしととゞむる人は由良助⊗はつとおとろく平右衛門⊗おかるははなして殺してと⊗あせるを押へてホウ兄弟共見上うたかひはれた兄はあつまの供をゆるす妹はながらへて

地:少身者の,ハル:少身者の地/ハル

ウ:見せねば

上:聞分て命を

中:妹と

ウ:事を

ハル:兄のハル

ウ:おかる

上:せき上〱

ウ:便のな

ウ:身の代を

ウ:役に

ウ:旅立か暇

ウ:暇乞にも見

ウ:見へそな

ウ:恨でば

ウ:おりました

ウ:勿体ないがとゝ

ウ:非業の

ウ:お年の

ウ:勘平殿は

ウ:死るのは嘸

ウ:嘸悲

ウ:逢たかつたて有

ウ:なぜ

ウ:親

ウ:精進さへ

ウ:しらぬは

ウ:何の生

ウ:お手に

ウ:かゝら

ウ:おまへ

ウ:自害

ウ:其跡

ウ:首なりと

詞:功に

地:さらばで,ハル:さらばで地/ハル

色:取上

詞:やれ

地:とゞむ,ハル:とゞむ地/ハル

ウ:はつと

上:おかる

ウ:殺してと

ウ:あせるを

詞:ホウ