殿鹿殿殿殿殿殿
あれ精進しやうじんする氣微塵みちんもごあらぬおこゝろざしの肴賞翫しやうくはん致すと何もなく只口にあぢはふ風情⊗邪智しやちふかき九大夫もあきれて詞もなかりける⊗扨此肴では呑ぬ〱にはとりしめさせ鍋焼なへやきさせん其元も奥へお出女郎共うたへ〱と⊗足元もしどろもどろの浮拍子うきひやうしテレツク〱ツヽテン〱おのれ末社まつしや共めれんになさで置べきかとさはきにまぎれ入にける⊗始終しゝうを見とゞけ鷺坂伴内さぎさかはんないかいよりおり立九大夫殿子細とつくと見届た主の命日に精進しやうじんさへせぬ根性こんしやうで敵討も寄ず此通主人師直へ申聞用心の門をひらかせませう⊗成最早もはや御用心に及ぬ事⊗是さまだ爰に刀を忘れて置ました⊗ほんに誠に大馬鹿ばか者の證拠しやうこたしなみたましいましよ扨さびたりな赤鰯あかいわし⊗ハヽヽヽヽヽヽ⊗いよ〱心顕はれ御安堵あんど〱ソレ九大夫がけらいのかご⊗はつとこたへて持出る⊗サア伴内殿お召なされ⊗先自分じぶん老体らうたいひらに〱⊗然らば御免と乗うつる⊗イヤ九太殿承はれば此所に勘平が女房がつとめておると聞ました貴殿には御存ないか九大夫殿〱といへどこたへずコハふしぎとかごすだれを引れば内には手ごろの庭の飛石コリヤどふじや九太夫は松浦まつうらさよ姫をやられたと見廻すこなたのゑんの下より⊗コレ〱伴内殿九大夫かかこぬけの計略けいりやくは最前力弥が

地:何氣もな,ハル:何氣もな地/ハル

ウ:一口に

ウ:邪智

フシ:軻て詞もフシ

詞:扨此

地:足元,ハル:足元地/ハル

色:テレツク

地:おのれ,ハル:おのれ地/ハル

ウ:めれんに

中:なさで

ハル:騒にまハル

ハル:入にける⊗ハル

地色:始終を,ウ:始終を地色/ウ

ハル:二階よりハル

色:おり立九

詞:九大夫殿

地:はつ,ハル:はつ地/ハル

色:持出る⊗サ

詞:サア

フシ:然らば御フシ

詞:イヤ

地:九大夫殿,ハル:九大夫殿地/ハル

ウ:コハ

ウ:駕の簾

色:明れば内

ウ:内には

ハル:庭のハル

詞:コリヤ

地:見廻す,ウ:見廻す地/ウ

ハル:縁のハル

詞:コレ