は〱石火矢と出かけた去とてはおかれい⊗イヤア由良助殿とぼけまい誠貴殿の放埒は敵を討術と見へるか⊗おんでもない事⊗忝い四十に余つて色狂ひ馬鹿者よ氣違よと笑はれうかと思ふたに敵を討術とは九大夫殿ホヽウ嬉しい〱⊗スリヤ其元は主人塩冶の怨を報ずる所存はないか⊗けもない事〱家国を渡す折から城を枕に討死といふたのは御臺様への追従時に貴様が上へ対して朝敵同然と其場をついと立た我等は跡にトしやちばつて居たいかゐたわけの所で仕廻は付ず御墓へ参つて切腹と裏門からこそ〱〱今此安楽なたのしみするも貴殿のおかげ昔のよしみは忘れぬ〱堅みをやめて砕おれ〱⊗いか様此九大夫も昔思へば信太の狐ばけ顕はして一献くもふかサア由良殿久しふりだお盃⊗又頂戴と会所めくのか⊗さしおれ呑は⊗呑おれさすは⊗てうと請おれ肴をするはと傍に有合蛸肴はさんでずつと指出せば⊗手を出して足を戴蛸肴忝いと戴て喰んとする⊗手をじつととらへコレ由良助殿明日は主君塩冶判官の御命日取わけ逮夜が大切と申が見事其肴貴殿は喰か⊗たへる〱但主君塩冶殿が蛸になられたといふ便宜が有たかヱ愚智な人では有こなたやおれが浪人したは判官殿か無分別からスリヤ恨こそ
は〱石火矢と出かけた去リとてはおかれい⊗イヤア由良ノ助殿とぼけまい誠貴殿ンの放埒は敵を討ツ術と見へるか⊗おんでもない事⊗忝い四十に余つて色狂ひ馬鹿者よ氣違よと笑はれうかと思ふたに敵を討ツ術とは九大夫殿ホヽウ嬉しい〱⊗スリヤ其元は主人塩冶の怨を報ずる所存ンはないか⊗けもない事〱家国を渡す折から城を枕に討死といふたのは御臺様への追従時に貴様が上へ対して朝敵同然と其場をついと立ツた我等は跡にトしやちばつて居たいかゐたわけの所で仕廻は付カず御墓へ参つて切ツ腹と裏門からこそ〱〱今此安楽なたのしみするも貴殿のおかげ昔のよしみは忘れぬ〱堅みをやめて砕おれ〱⊗いか様此九大夫も昔思へば信太の狐ばけ顕はして一献くもふかサア由良殿久しふりだお盃キ⊗又頂戴と会所めくのか⊗さしおれ呑ムは⊗呑ミおれさすは⊗てうと請ケおれ肴をするはと傍に有合蛸肴はさんでずつと指出せば⊗手を出して足を戴蛸肴忝いと戴イて喰んとする⊗手をじつととらへコレ由良ノ助殿明日は主君塩冶判官の御命イ日取わけ逮夜が大切ツと申スが見事其肴貴殿ンは喰か⊗たへる〱但シ主君塩冶殿が蛸になられたといふ便宜が有たかヱ愚智な人では有ルこなたやおれが浪人したは判官殿か無分別からスリヤ恨こそ
地色:肴を,ウ:肴を地色/ウ
ハル:有合蛸肴ハル
ウ:はさんでウ
フシ:ずつとフシ
詞:手を詞
地色:忝いと戴て喰ん,ウ:忝いと戴て喰ん地色/ウ
ハル:喰んとすハル
ウ:じつとウ
色:とらへ色
詞:コレ詞