よう出来たイヤもふ在所はどこもかも麦秋時分でいそがしい今も藪際で若い衆が麦かつ哥に親仁出て見やばゞんつれてとうたふを聞親父殿の遅いが氣にかゝり在口迄いたれとようなふ影も形も見へぬさいなこりやまあどふして遅い事じやわし一走見て来やんしよイヤなふ若い女の一人あるくはいらぬ事殊にそなたはちいさい時から在所をあるく事さへ嫌ひで塩冶様へ御奉公にやつたれととふでも草深い所に縁が有やら戻りやつたが勘平殿と二人居やればおとましい顔も出ぬヲヽかゝ様のそりやしれた事すいた男と添のじや物在所はおろかまつしい暮しても苦にならぬやんがて盆に成てとさま出て見やかゝんつかゝんつれてといふ哥の通勘平殿とたつた二人踊見にいきやんしよおまへも若い時覚へがあろと指合くらぬぐはら娘氣もわさ〱と見へにける何ぼ其様に面白おかしういやつても心の内はのイヱ〱済でござんすぬしの為に祗園町へ勤奉公に行は兼て覚悟のまへなれど年寄てとゝ様の世話やかしやんすがそりやいやんな小身者なれど兄も塩冶様の御家来なれば外の世話する様にもないと親子咄の中道伝ひ駕をかゝせて急きくるは祗園町の一文字や爰じや〱と門口から与市兵衛殿内にかと云つゝはいれば是はまあ
よう出来たイヤもふ在所はどこもかも麦秋時分ンでいそがしい今も藪際で若い衆が麦かつ哥に親仁出て見やばゞんつれてとうたふを聞親父殿の遅いが氣にかゝり在口迄いたれとようなふ影も形も見へぬさいなこりやまあどふして遅い事じやわし一ト走リ見て来やんしよイヤなふ若い女コの一人リあるくはいらぬ事殊にそなたはちいさい時から在所をあるく事さへ嫌ひで塩冶様へ御奉公にやつたれととふでも草深い所に縁が有ルやら戻りやつたが勘平殿と二人リ居やればおとましい顔も出ぬヲヽかゝ様のそりやしれた事すいた男と添のじや物在所はおろかまつしい暮しても苦にならぬやんがて盆に成ツてとさま出て見やかゝんつかゝんつれてといふ哥の通リ勘平殿とたつた二人リ踊見にいきやんしよおまへも若い時覚へがあろと指合イくらぬぐはら娘氣もわさ〱と見へにける何ンぼ其様に面白おかしういやつても心の内チはのイヱ〱済でござんすぬしの為に祗園町へ勤奉公に行クは兼て覚悟のまへなれど年シ寄てとゝ様の世話やかしやんすがそりやいやんな小身者なれど兄も塩冶様の御家来なれば外の世話する様にもないと親子咄の中道伝ひ駕をかゝせて急きくるは祗園町の一文字や爰じや〱と門口から与市兵衛殿内にかと云つゝはいれば是はまあ
地:かゝん,ハル:かゝん地/ハル
詞:勘平殿と詞
地色:おまへ,中:おまへ地色/中
ハル:指合くらハル
フシ:氣もフシ
詞:何ぼ其詞
地色:年,ウ:年地色/ウ
ハル:やかしやんすがハル
色:そりや色
詞:小身者なれど詞
地:親子,ウ:親子地/ウ
ハルフシ:中道ハルフシ
地:駕をか,ハル:駕をか地/ハル
ウ:爰じや〱ウ
ウ:与市兵衛殿ウ
色:云つゝは色
詞:是はま詞