身をよぎるかけくる猪は一文字木の根岩角ふみ立蹴立鼻いからして泥も草木も一まくりに飛行ばあはやと見送る定九郎が背骨をかけてどつさりとあばらへぬける二つ玉うん共ぎやつ共いふ間なくふすぼり返りて死たるは心地よくこそ見へにけれ猪打とめしと勘平は鉄砲提爰かしこさぐり廻りて扨こそと引立れば猪にはあらずヤア〱こりや人じやなむ三宝仕損じたりと思へど暗き真の闇誰人成ぞと問れもせずまだ息あらんと抱起せば手に当る金財布掴で見れば四五十両天のあたへと押戴〱猪より先へ逸散に飛がごとくに急きける第六みさき踊がしゆんだる程に親仁出て見やばゞんつばゞん連れて親仁出て見やばゞんつ麦かつ音の在郷哥所も名におふ山崎の小百性与市兵衛が埴生の住家今は早の勘平が浪々の身の隠れ里女房おかるは寝乱し髪取上んと櫛箱のあかつきかけて戻らぬ夫待間もとけし投嶋田結にいはれぬ身の上を誰にかつげの水櫛に髪の色艶すきかへし品よくしやんと結立しは在所に惜き姿なり母の齢も杖つきの野道とぼ〱立帰りヲヽ娘髪結つたか美ふ
身をよぎるかけくる猪は一チ文字木の根岩角ふみ立テ蹴立テ鼻いからして泥も草木も一トまくりに飛行ばあはやと見送る定九郎が背骨をかけてどつさりとあばらへぬける二つ玉うん共ぎやつ共いふ間なくふすぼり返りて死たるは心地よくこそ見へにけれ猪打とめしと勘平は鉄砲提爰かしこさぐり廻りて扨こそと引ツ立れば猪にはあらずヤア〱こりや人じやなむ三宝仕損じたりと思へど暗き真の闇誰レ人成ルぞと問れもせずまだ息あらんと抱起せば手に当タる金財布掴で見れば四五十両天のあたへと押シ戴〱猪より先キへ逸散に飛がごとくに急きける第六みさき踊がしゆんだる程に親仁出て見やばゞんつばゞん連れて親仁出て見やばゞんつ麦かつ音トの在郷哥所も名におふ山崎の小百性与市兵衛が埴生の住家今は早の勘平が浪々の身の隠れ里女房おかるは寝乱し髪取リ上んと櫛箱のあかつきかけて戻らぬ夫ト待ツ間もとけし投ケ嶋田結にいはれぬ身の上を誰レにかつげの水櫛に髪の色艶すきかへし品よくしやんと結立テしは在所に惜き姿なり母の齢も杖つきの野道とぼ〱立帰りヲヽ娘髪結つたか美ふ
ウ:かけウ
コハリ:木のコハリ
下:鼻下
ナヲス:草木もナヲス
ハル:一まくりにハル
ウ:あはやとウ
ウ:背骨をウ
色:二つ玉色
ウ:うん共ウ
ハル:いふハル
ウ:ふすぼりウ
ハツミフシ:死たるはハツミフシ
地色:猪,ウ:猪地色/ウ
ハル:勘平はハル
ウ:引立ればウ
色:あらず色
詞:ヤア詞
地:仕損じたり,ウ:仕損じたり地/ウ
ハル:誰人ハル
ウ:まだウ
ウ:手にウ
ウ:掴でウ
色:四五十両色
ウ:天のウ
ハル:猪よりハル
ウ:逸散にウ
ウ:飛がごとくにウ
三重:急きける三重
三下リ:みさき踊が,歌:みさき踊が三下リ/歌
ウ:親仁ウ
中:出て中
ハル:ばゞんハル
中:出て中
ハル:ばゞんつ,ナヲス:ばゞんつハル/ナヲス
ウ:麦ウ
フシ:在郷哥フシ
地:所も,ウ:所も地/ウ
ハル:小百性ハル
ウ:与市兵衛がウ
中:住家中
ウ:今はウ
ハル:勘平がハル
ウ:浪々のウ
中:隠れ里中
ウ:女房ウ
スヱテ:寝乱しスヱテ
ハル:髪ハル
中:櫛箱の中
ハル:夫ハル
ウ:待ウ
中:投嶋田中
ウキン:結にウキン
ウ:身の上をウ
ウ:誰にかウ
上:つげの上
中:水櫛に,キン:水櫛に中/キン
ハル:髪のハル
ウ:色艶ウ
ウ:しやんとウ
中:結中
フシ:在所にフシ
ハル:姿なりハル
地:母の,中:母の地/中
ハル:杖ハル
ウ:野道ウ
色:立帰り色
詞:ヲヽ詞