げに傍輩のよしみなりハアヽ忝い弥五郎殿成程石牌といひ立御用金の御拵有事とつくに承はり及び某も何とぞして用金を調へそれを力に御詫と心は千々に砕共弥五郎殿恥しや主人の御罰て今此ざま誰にかうとの便もなしされもかるが親与市兵衛と申はたのもしい百姓我々夫婦が判官公へ不奉公を悔歎き何とぞして元の武士に立かへれとおぢうば共に歎悲しむ是幸御辺に逢し物語段々の子細を語り元の武士に立かへると云聞さば僅の田地も我子の為何しにいなはゑもいはじ御用金を手がゝりに郷右衛門殿迄お取次一入頼存ると余義なき詞にムヽ成程然らば是より郷右衛門殿迄右の訳をも咄し由良殿へ願ふて見ん明々日は必急度御返事則郷右衛門殿の旅宿の所書と渡せば取て押戴重々の御世話忝し何とぞ急に御用金を拵へ明々日お目にかゝらん某が在家お尋あらば此山崎の渡場を左へ取与市兵衛とお尋あれば早速相知申べし夜ふけぬ内に早くも御出コレ此行先は猶ぶつさう随分ぬかるな合点〱石牌成就する迄は蚤にもくはさぬ此體御辺も堅固で御用金の便を待ぞ去ば〱と両方へ立別れてぞ急ぎ行又もふりくる雨の足人の足音とぼ〱と道は闇路に迷はねど子故の闇につく杖もすぐ成心堅親仁一筋道
げに傍輩のよしみなりハアヽ忝い弥五郎殿成程石キ牌といひ立御用金の御拵有ル事とつくに承はり及び某も何とぞして用金を調へそれを力に御詫と心は千々に砕共弥五郎殿恥しや主人の御罰て今此ざま誰にかうとの便リもなしされもかるが親与市兵衛と申スはたのもしい百姓我々夫婦が判官公へ不奉公を悔歎き何とぞして元トの武士に立かへれとおぢうば共に歎キ悲しむ是幸イ御辺に逢し物語段々の子細を語り元の武士に立かへると云聞さば僅の田地も我子の為何しにいなはゑもいはじ御用金を手がゝりに郷右衛門殿迄お取次キ一ト入頼存ると余義なき詞にムヽ成ル程然らば是より郷右衛門殿迄右の訳をも咄し由良殿へ願ふて見ん明々日は必急度御返事則チ郷右衛門殿の旅宿の所書キと渡せば取ツて押シ戴重々の御世話忝し何とぞ急に御用金を拵へ明々日お目にかゝらん某が在家お尋あらば此山崎の渡場を左リへ取リ与市兵衛とお尋あれば早速相知レ申スべし夜ふけぬ内に早くも御出コレ此行先キは猶ぶつさう随分ンぬかるな合点〱石キ牌成就する迄は蚤にもくはさぬ此體御辺も堅固で御用金の便リを待ツぞ去ば〱と両方へ立別れてぞ急ぎ行又もふりくる雨の足人の足音トとぼ〱と道は闇路に迷はねど子故の闇につく杖もすぐ成ル心堅親仁一ト筋道
フシ:げにフシ
詞:ハアヽ詞
地色:おぢ,ウ:おぢ地色/ウ
ウ:是ウ
ハル:物語ハル
ウ:段々のウ
ウ:元のウ
ウ:僅のウ
中:我子の中
ウ:何しにウ
ハル:ゑもハル
ウ:御用金をウ
中:お取次中
ウ:一入ウ
詞:然らば詞
地:渡せば,ハル:渡せば地/ハル
ウ:重々のウ
色:忝し色
詞:何とぞ詞
地色:去ば〱,中:去ば〱地色/中
ヲクリ:立別ヲクリ
地:又も,ハル:又も地/ハル
ウ:雨のウ
中:とぼ〱と中
ウ:道はウ
ハル:子ハル
ウ:すぐ成ウ