武士でないなふ力弥殿何とそふでは有まいかと詞の角をなだむる御臺二人共に諍ひ無用今度夫の御難義なさる元の發は此かほよ日外靏が岡で饗應の折から道知らずの師直主の有自に無体な恋を云かけ様々と口説しが恥をあたへ懲させんと判官様にもしらさず哥の点に事寄さよ衣の哥を書恥しめてやつたれば恋の叶はぬ意趣ばらしに判官様に悪口元来短氣なお生れ付得堪忍なされぬはお道理でないかいのと語り給へば郷右衛門力弥も倶に御主君の御憤りを察し入心外面に顕はせり早御上使の御出と玄関廣間ひしめけば奥へかくと通じさせ奥方も座をさかり三人出向ふ間もなく入来る上使は石堂右馬之丞師直か昵近薬師寺次郎左衛門役目なれば罷通ると会釈もなく上座に着ば一間の内より塩冶判官しづ〱と立出是は〱御上使と有て石堂殿御苦労千万先お盃の用意せよ御上使の趣承はりいづれもと一献汲積鬱をはらし申さんヲヽそれようござろ薬師寺もお間致さふしたが上意を聞れたら酒も咽へ通るまいとあざ笑へば右馬之丞我々今日上使に立たる其趣具に承知せられよと懐中より御書取出し押ひらけば判官も席を改め承はる其文言此度塩冶判官高定私の宿意を以て執事高師直を刃傷に及び館をさはがせし科によつて国郡を没収し
武士でないなふ力弥殿何ンとそふでは有ルまいかと詞の角をなだむる御臺二人リ共に諍ひ無用今ン度夫の御難義なさる元トの發は此かほよ日外靏が岡で饗應の折から道知らずの師直主の有ル自に無体な恋を云かけ様々と口説しが恥をあたへ懲させんと判官様にもしらさず哥の点に事寄セさよ衣の哥を書キ恥しめてやつたれば恋の叶はぬ意趣ばらしに判官様に悪ツ口元来短氣なお生れ付キ得堪忍なされぬはお道理でないかいのと語り給へば郷右衛門力弥も倶に御主君の御ン憤りを察し入心外面に顕はせり早御上使の御出と玄関廣間ひしめけば奥へかくと通じさせ奥方も座をさかり三人出向ふ間タもなく入来る上使は石と会釈()もなく上座に着()ば一ト間の内より塩冶判官しづ〱と立出是は〱御上使と有ツて石堂殿御苦労()千万ン先ツお盃キの用意()せよ御上使の趣()承はりいづれもと一ツ献()汲()積鬱()をはらし申さんヲヽそれようござろ薬師寺もお間()致さふしたが上意ゐを聞れたら酒も咽()へ通るまいとあざ笑へば右馬之丞我々今日上使に立たる其趣キ具()に承知()せられよと懐()中()より御書取出し押ひらけば判官も席()を改()め承はる其文ン言此度塩冶判官高定私の宿意()を以ツて執事()高ノ師直を刃傷()に及び館をさはがせし科()によつて国郡を没収()し
地:何と,ウ:何と地/ウ
ハル:詞のハル
ウ:二人ウ
色:無用色
詞:今度詞
地色:哥の,中:哥の地色/中
ハル:事寄ハル
ウ:さよ衣のウ
色:やつたれば色
詞:恋の詞
地:得,ハル:得地/ハル
ウ:お道理でウ
ウ:語りウ
ウ:力弥もウ
ウ:御憤りをウ
フシ:心外フシ
地:早,ウ:早地/ウ
ハル:玄関ハル
中:ひしめけば中
ウ:奥へウ
ウ:奥方もウ
ウ:三人ウ
ウ:入来ウ
ハル:石堂ハル
中:右馬之丞中
ウ:師直かウ
ウ:役目なればウ
ウ:会釈もウ
ハル:上座ハル
ウ:一間のウ
中:立出中
詞:是は詞
地色:御上使の,ウ:御上使の地色/ウ
ハル:承はハル
ウ:いづれもとウ
ウ:積鬱をウ
中:申さん中
詞:ヲヽ詞
地:あざ笑へば,ハル:あざ笑へば地/ハル
色:右馬之丞色
詞:我々詞
地:懐中より,ウ:懐中より地/ウ
ハル:押ひらけばハル
スヱ:席をスヱ
色:其色
詞:此詞