ヲヽうろたへた是がうろたへずに居られうか主人一生懸命の場にも有合さず剰囚人同前の網乗物御屋敷は閉門其家来は色にふけり御供にはづれしと人中へ両腰さして出られふか爰を放せマヽヽヽ待て下さんせ尤じや道理じやが其うろたへ武士には誰がした皆わしが心から死る道ならおまへよりわたしが先へ死ねばならぬ今おまへが死たらばたが侍じやと誉まする爰をとつくりと聞分てわたしが親里へ一先来て下さんせとゝ様もかゝ様も在所でこそあれたのもしい人もふかう成た因果じやと思ふて女房のいふ事も聞て下され勘平殿とわつと斗に泣しづむそふじや尤そちは新参なれば委細の事は得しるまいお家の執権大星由良助殿いまだ本国ゟ帰られず帰国を待てお詫せんサア一時成共急がんと身拵へする所へ鷺坂伴内家来引連かけ出ヤア勘平うぬが主人判官師直様へ慮外を働きかすり疵負せし科によつて屋敷は閉門追付首が飛は知た事サア腕廻せ連帰つてなぶり切覚悟ひろげとひしめけばヤアよい所へ鷺坂伴内己一羽で喰たらねど勘平が腕の細ねぶか料理塩梅くふて見よイヤ物ないはすな家来共畏たと両方より取たとかゝるをまつかせとかいくゞり両手に両腕捻上はつし〱と蹴かへせば替つて切込切先を刀の鞘にて丁ど受廻つてくるを鐺と柄にてのつけにそ
ヲヽうろたへた是がうろたへずに居られうか主人一ツ生懸命の場にも有合さず剰囚人同前ンの網乗物御屋敷は閉門其家来は色にふけり御供にはづれしと人中カへ両腰さして出られふか爰を放せマヽヽヽ待ツて下さんせ尤じや道理じやが其うろたへ武士には誰がした皆わしが心から死る道ならおまへよりわたしが先キへ死ねばならぬ今おまへが死ンたらばたが侍イじやと誉まする爰をとつくりと聞分ケてわたしが親里へ一先ツ来て下さんせとゝ様もかゝ様も在所でこそあれたのもしい人もふかう成た因果じやと思ふて女房のいふ事も聞て下され勘平殿とわつと斗に泣しづむそふじや尤そちは新参なれば委細の事は得しるまいお家の執権大星由良ノ助殿いまだ本ン国ゟ帰られず帰国を待ツてお詫せんサア一ツ時成リ共急がんと身拵へする所へ鷺坂伴内家来引連かけ出ヤア勘平うぬが主人判官師直様へ慮外を働きかすり疵負せし科によつて屋敷は閉門追ツ付ケ首が飛は知レた事サア腕廻せ連レ帰つてなぶり切覚悟ひろげとひしめけばヤアよい所へ鷺坂伴内己一チ羽で喰たらねど勘平が腕の細ねぶか料理塩梅くふて見よイヤ物ないはすな家来共畏たと両方より取たとかゝるをまつかせとかいくゞり両手に両腕捻上はつし〱と蹴かへせば替つて切リ込ム切ツ先キを刀の鞘にて丁ど受ケ廻つてくるを鐺と柄にてのつけにそ
地:因果じやと,ハル:因果じやと地/ハル
ウ:女房のウ
ウ:聞てウ
ウ:勘平殿とウ
スヱ:わつとスヱ
中:泣しづむ中
詞:そふじや詞
地色:一時成共,ハル:一時成共地色/ハル
フシ:身拵へフシ
地:鷺坂,ハル:鷺坂地/ハル
色:かけ出色
詞:ヤア,ノル:ヤア詞/ノル
地:連帰つて,ウ:連帰つて地/ウ
ハル:覚悟ハル
色:ひしめけば色
詞:ヤア,ノリ:ヤア詞/ノリ
地色:イヤ,ウ:イヤ地色/ウ
ハル:畏たと両ハル
ウ:取たとウ
ウ:両手にウ
フシ:蹴かへせばフシ
地:替つて,ウ:替つて地/ウ
ハル:刀のハル
ウ:廻つてウ