せうこんによつてこしをすれはアノ謡で思ひ付たイザ腰かけてと手を引合打連て行脇能過て御楽屋に鼓の調太鼓の音天下泰平繁昌の寿祝ふ直義公御機嫌なゝめならざりける若狭助は兼て待師直遅しと御殿の内奥を窺ふ長袴の紐しめくゝり氣配しおのれ師直真二つと刀のこゐ口息を詰待共しらぬ師直主従遠目に見付是は〱若狭助殿扨々お早い御登城イヤハヤ我折ました我等閉口〱イヤ閉口序に貴殿に云訳致お詫申事が有と両腰ぐはらりと投出し若狭助殿改めて申さねばならぬ一通日外靏か岡で拙者が申た過言ヲヽお腹が立たで有ふ尤じやがそこをお詫其時はどふやらした詞の間違でつゐ申た我等一生の麁忽武士がこれ手をさげるまつぴら〱仮令其元か物馴たお人なりやこそ外々のうろたへ者で見さつしやれ此師直真二つこはや〱有やうが其節貴殿の後かげ手を合して拝ましたアハヽヽアヽ年寄とやくたい〱年にめんして御免〱是さ〱武士が刀を投出し手を合す是程に申のを聞入ぬ貴公でもないはさ兎角幾重にも誤り〱伴内倶々にお詫〱と金がいはする追従とは夢にもしらぬ若狭助りきみし腕も拍子ぬけ今更抜にぬかれもせずねたば合せし刀の手前指うつむきし思案顔小柴のかげに本蔵が盼もせす守り居るナニ伴内此塩冶はなぜ遅い若狭助殿とはきつい違ひ扨々ふ行義者今に
せうこんによつてこしをすれはアノ謡で思ひ付イたイザ腰かけてと手を引合打連て行脇能過キて御楽屋に鼓の調太鼓の音天下泰平繁昌の寿祝ふ直義公御機嫌なゝめならざりける若狭ノ助は兼て待ツ師直遅しと御殿の内奥を窺ふ長袴の紐しめくゝり氣配しおのれ師直真二つと刀のこゐ口息を詰待ツ共しらぬ師直主従遠目に見付ケ是は〱若狭ノ助殿扨々お早い御登城イヤハヤ我折ました我等閉口〱イヤ閉口序に貴殿ンに云訳致お詫申ス事が有と両腰ぐはらりと投ケ出し若狭ノ助殿改めて申さねばならぬ一ト通リ日外靏か岡で拙者が申シた過言ヲヽお腹が立たで有ふ尤じやがそこをお詫其時はどふやらした詞の間違でつゐ申シた我等一生の麁忽武士がこれ手をさげるまつぴら〱仮令其元か物馴たお人なりやこそ外々のうろたへ者で見さつしやれ此師直真ツ二つこはや〱有やうが其節貴殿ンの後かげ手を合して拝ましたアハヽヽアヽ年シ寄ルとやくたい〱年シにめんして御免ン〱是さ〱武士が刀を投ケ出し手を合す是程に申スのを聞入ぬ貴公でもないはさ兎角幾重にも誤り〱伴内倶々にお詫〱と金がいはする追従とは夢にもしらぬ若狭ノ助りきみし腕も拍子ぬけ今更抜にぬかれもせずねたば合せし刀の手前指うつむきし思案顔小柴のかげに本蔵が盼もせす守り居るナニ伴内此塩冶はなぜ遅い若狭ノ助殿とはきつい違ひ扨々ふ行義者今に
謡:せうこんに謡
ナヲス:すれはナヲス
詞:アノ詞
地色:イザ,ウ:イザ地色/ウ
ハル:手をハル
トル:打連てトル
地:脇能,ハル:脇能地/ハル
中:太鼓の中
ウ:天下ウ
ハル:直義公ハル
ウ:御機嫌ウ
フシ:なゝめならざりけるフシ
地色:若狭助は,ウ:若狭助は地色/ウ
ハル:奥をハル
色:氣配し色
ウ:おのれウ
ハル:師直ハル
フシ:待共フシ
地色:師直,ウ:師直地色/ウ
ハル:遠目にハル
色:見付色
詞:是は詞
地:両腰,ハル:両腰地/ハル
色:投出し色
詞:若狭助殿詞
地色:お詫,ウ:お詫地色/ウ
ウ:金がウ
ハル:しらぬハル
ウ:りきみしウ
ウ:今更ウ
ウ:ぬかれもウ
ウ:ねたばウ
中:指うつむきし中
ウ:思案顔ウ
ハル:小柴のハル
ウフシ:守りウフシ
詞:ナニ詞