退
退
いとつゐ一走に走つてきたアヽしんどやと吐息といきつく然らば此文箱旦那の手から師直様へ渡せはよいじや迄どりや渡してこふ待て居いといふ中に門内より勘平〱〱判官様が召まする勘平〱ハイハイ〱只今それへヱヽせはしないと袖ふり切て行跡へどぢやうふむ足付鷺坂伴内なんとおかる恋の智恵ちゑは又格別かくべつ勘平めとせゝくつて居る所を勘平〱旦那がお召と呼だはきついか〱師直様がそもじに頼たい事が有とおつしやる我等はそさまにたつた一度君よ〱とだき突飛つきとはコレみだらな事遊ばすな式作法さほうのお家に居ながら狼籍らうぜき千万あたぶ作法なあたふ行義突退つきのくればそれは難面つれないくらがりまきれにつゐちよこ〱と手を取あらそふ其内に伴内様〱師直様の急御用伴内様〱と奴二人がうろ〱眼玉めだまで是はしたり伴内様最前から師直様が御尋式作法のお家に居ながら女をとらへあたふ行義なあたふ作法と下部が口々ヱヽ同様に何ぬかすとつらふくらして連立行勘平跡へ入かはり何と今のはたらき見たか伴内めか一ぱいくらふてうせおつたおれが来て旦那が呼しやるといふとおけ古いとぬかすが面倒めんだうさに奴共に酒のませ古いといはさぬ此てたてハヽ〱〱まんまと首尾しゆび仕終しおほせたサア其首尾ついでになちよつと〱と手を取ハハテ扨はづんたマアまちやいの何いはんすやら何の待事が有そいなアもふやがて夜が明るわいな是非ぜひに〱に是非なくも下地はすき也御はよしそれても爰は人出入奥はうたひの声高砂

ウ:つゐ

フシ:アヽフシ

詞:然らば

地色:どりや,ウ:どりや地色/ウ

ハル:いとハル

色:門内より

詞:勘平

地:ヱヽ,ハル:ヱヽ地/ハル

フシ:袖フシ

地:鯲,ハル:鯲地/ハル

色:鷺坂

詞:なんと

地:君よ,ウ:君よ地/ウ

ハル:抱ハル

色:突

地色:突退ればそれ,ウ:突退ればそれ地色/ウ

ウ:くらがり

ハル:つゐハル

ウ:手を

色:其

詞:伴内様

地:奴,ハル:奴地/ハル

色:伴内様

詞:最前から

地色:下部が,ウ:下部が地色/ウ

ハル:何ハル

フシ:頬フシ

地:勘平,ウ:勘平地/ウ

色:入かはり

詞:何と

地:ちよつと,ハル:ちよつと地/ハル

色:手を

詞:ハハテ

地:是非に,ハル:是非に地/ハル

ウ:是非

中:下地は

ウ:御意は

詞:それても

地:奥は,ウ:奥は地/ウ

ハル:高砂ハル