はし出我々見付のお腰かけにひかへし所へ桃井若狭助家来加古川本蔵師直様へ直御目にかゝらん為早馬にてお屋敷へ参つたれ共早御登城とじやう是非ぜひ意得ゐゑ奉らんと家来も大勢つれたるていいかゞはからひ申さんやと聞より伴内さはき出し今日御用の有師直様へ直対面たいめんとは推参すいさん也某直談と走行を待々伴内子細はしれた一昨日靏が岡にての意趣ゐしゆばらし我手を出さず本蔵めに云付此師直が威光ゐくはうの鼻をひしがん為ハヽヽヽヽ伴内ぬかるな七つにはまだ間もあらん是へ呼出せ仕廻てくれん成程〱家来共氣をくばれとしう〱従刀の目くぎをしめし手ぐすね引て待かけ居る詞にしたがひ加古川本蔵衣紋ゑもんつくろ悠々ゆう〱と打通り部に持せし進物しんもつ共師直が目通にならべさせはるかさがつてうづくまりハアはゞかりながら師直様へ申奉る此度主人若狭助尊氏将軍より御大役仰付られ下さる段武士の面目めんぼく身に餘る仕合若輩じやくはいの若狭助何作法さほう覚束おほつかなくいかゞあらんと存る所に師直様万事御範を遊ばされ諸事を御引廻し下され候故首尾しゆびよく御用相つとめるもまつた主人が手柄てがらにあらず皆師直様の御執成とりなしと主人を始奥方一家中我々迄も大けい此上や候べき去によつて近せういたりに候へ共右御礼の為一家中ゟの送り物お受遊ばされ下さらば生前しやうせん面目めんぼくしほ奉る目録もくろく御取次と伴内に指出せば不思議ふしぎそふにそつと取押ひらき目録一まき物卅本

色:走

詞:我々

地色:いかゞ,ハル:いかゞ地色/ハル

ウ:聞より

中:騒

詞:今日

地色:某,ウ:某地色/ウ

詞:待

地色:七つには,ウ:七つには地色/ウ

ウ:是へ

ウ:成程

ハル:氣をハル

ウ:主従

ウ:目釘を

ウ:手ぐすね

フシ:待フシ

地:詞に,ウ:詞に地/ウ

ハル:加古川ハル

中:本蔵

ウ:衣紋

ウ:打通り

ハル:進物共ハル

ウ:師直が

フシ:遥フシ

詞:ハア

地色:則,ウ:則地色/ウ

ハル:不思議そふにハル

色:押開き

詞:目録