第三足利左兵衛督直義公関八州の官領と新に建し御殿の結構大名小名美麗を飾る晴装束鎌倉山の星月夜と袖を列る御馳走に御能役者は裏門口表御門はお客人御饗應の役人衆正七つ時の御登城武家の威光ぞ輝ける西の御門の見付の方ハイ〱〱といかめしく挑燈てらし入来るは武蔵守高師直権威を顕はす鼻高々花色模様の大紋に胸に我慢の立烏帽子家来共を役所〱に残し置下部僅に先を拂はせ主の威光の召おろし靏の真似する鷺坂伴内肩臂いからし申お旦那今日の御前表も上首尾〱塩冶で候のイヤ桃井で候のと日比はどつぱさつぱとどしめけど行義作法は狗を屋根へ上た様で去とは〱腹のかはイヤそれに付兼々塩冶が妻かほよ御前いまだ殿へ御返事致さぬ由お氣にはさへられな器量はよけれど氣か叶はぬ何の塩冶づれと当時出頭の師直様とヤイ〱声高に口利な主有かほよ度々哥の師範に事寄くどけ共今に叶ぬ則彼が召使かるといふ妼新参と聞きやつをこま付頼で見ん扨まだ屑が有かほよが誠にいやならば夫塩冶に子細をくはらりと打明る所を云ぬは楽しみと四つ足門の片かげに主従黙頭咄し合折もあれ見付に扣へし侍あはたゝしく
第三足利左兵衛ノ督直義公関八州の官領と新に建し御殿の結構大名小名美麗を飾る晴装束鎌倉山の星月夜と袖を列る御馳走に御能役者は裏門ン口表御門ンはお客人御饗應の役人衆正七つ時の御登城武家の威光ぞ輝ける西の御門ンの見付ケの方ハイ〱〱といかめしく挑燈てらし入来るは武蔵守高ノ師直権威を顕はす鼻高々花色模様の大紋に胸に我慢の立テ烏帽子家来共を役所〱に残し置下モ部僅に先キを拂はせ主の威光の召おろし靏の真似する鷺坂伴内肩臂いからし申お旦那今日の御前ン表テも上首尾〱塩冶で候のイヤ桃ノ井で候のと日比はどつぱさつぱとどしめけど行義作法は狗を屋根へ上ケた様で去リとは〱腹のかはイヤそれに付キ兼々塩冶が妻かほよ御前いまだ殿へ御返事致さぬ由お氣にはさへられな器量はよけれど氣か叶はぬ何ンの塩冶づれと当時出頭の師直様とヤイ〱声高に口利な主有ルかほよ度々哥の師範に事寄セくどけ共今に叶ぬ則チ彼レが召使イかるといふ妼新ン参ンと聞きやつをこま付ケ頼ンで見ん扨まだ屑が有ルかほよが誠にいやならば夫ト塩冶に子細をくはらりと打明ケる所を云ぬは楽しみと四つ足門の片かげに主従黙頭咄し合フ折もあれ見付ケに扣へし侍イあはたゝしく
地:足利,ハル:足利地/ハル
ウ:関八州のウ
中:結構中
ウ:大名ウ
ハル:鎌倉山のハル
ウ:袖をウ
中:御馳走に中
ウ:御能役者はウ
ハル:表ハル
ウ:御饗應のウ
ウ:正ウ
フシ:武家のフシ
地色:西の,ハル:西の地色/ハル
中:見付の中
色:ハイ〱〱色
ウ:いかめしくウ
ハル:挑燈ハル
ウ:武蔵守ウ
上:高上
中:師直中
ウ:権威をウ
ウ:鼻ウ
ウ:花色ウ
ハル:胸にハル
中:立烏帽子中
ウ:家来共をウ
ウ:下部ウ
ウ:主のウ
ウ:靏のウ
ハル:肩臂ハル
色:申お色
詞:今日の詞
地:四つ足,ハル:四つ足地/ハル
フシ:折もフシ
地:見付に,ハル:見付に地/ハル