殿殿殿退
殿殿殿退
みするか是はお詞共覚へず冬は日かげ夏は日面よけて通れば門中にて行違ひの喧嘩けんくわ口論こうろんないと申は町人のたとへ武士の家では杓子しやくし定規ぢやうぎよけて通せばほうずがないと申のが本蔵めが誤りか御詞さみ致さぬ心てい御覧に入んと御そばのちいさ刀ぬくより早く書院しよゑん成召がへさうかたし片手の早ねたばとつくと合せ縁先の松の片枝ずつぱと切て手ばしかくさやに納サア殿まつ此通りにさつぱりと遊ばせ〱いふにや及ぶ人や聞あたりに氣を付今夜はまだ九つくつたりと一やすみ時斗どけい目覚めさまし本蔵めがしかけ置く早く〱ヲヽ聞入有満足まんぞくせり奥にも逢て余所よそながらの暇乞いとまごひモウ逢ぬぞよ本蔵さらば〱と云捨て奥の一間に入給ふ武士のいきぢはもなし御うしろかげ見おくり〱勝手口へ走出本蔵が家来馬引早くといふ間もなくもゝだちしやんとりゝしげに御にはに引出せばゑんゟひらりと打乗て師直のやかた迄つゞけやつゞけと乗出すくつわすかつてとなせ小浪コレ〱どこへ始終しゞうの様子は聞ました年にこそよれ本蔵殿主人に御異見ゐけんも申さず合点行ぬ留ますと母と娘がぶら〱〱轡に縋とゞむればヤア小指出た主人のお命お家の為思ふ故に此時冝しき必此事殿へ御さた致すなお耳へ入たら娘は勘当となせは夫婦の縁を切家来共道にて諸事を云付んそこ退のけ両人イヤイヤ〱シヤ面倒めんだうなとあぶみはなあてはつしと当られてうんと計にのつけにそるを見向もせず家来つゞけと馬けふり打立力足ふみ立てこそかけり行

地色:御覧に,ハル:御覧に地色/ハル

ウ:抜より

中:書院成

ハル:片手のハル

ウ:とつくと

ウ:ずつぱと

ウ:鞘に,フシ:鞘にウ/フシ

詞:サア

地:人や,ウ:人や地/ウ

ウ:辺に

ウ:今夜は

ハル:枕時斗のハル

ウ:本蔵めが

色:早く

詞:ヲヽ

地:さらば,ハル:さらば地/ハル

ウ:奥の

フシ:武士のフシ

地:御後かげ,ハル:御後かげ地/ハル

色:送り〱勝

詞:本蔵が

地:もゝだち,ハル:もゝだち地/ハル

ウ:りゝしげ

フシ:御庭にフシ

地:縁ゟ,ハル:縁ゟ地/ハル

ウ:師直の

色:乗

詞:轡に,ノリ:轡に詞/ノリ

地:母と,ハル:母と地/ハル

ウ:轡に

色:留むれば

詞:ヤア,ノリ:ヤア詞/ノリ

地:家来共,ハル:家来共地/ハル

ウ:そこ

色:イヤイヤ〱

ハル:シヤハル

ウ:一当

色:当られて

ハル:うんと計にハル

ウ:家来

ウ:ふみ立てこそ

三重:かけり,上:かけり三重/上