致さず他言たこんもせぬ先思召の一おせきなされずと本蔵めが胃の腑に落付様にとつくりと承はらんと相のふるムヽ一語つて聞せん此度官領くはんれい足利左兵衛督しかゞさひやうへのかみ直義公靏が造営さうゑい故此鎌倉へ御下向けかう馳走ちさうの役は塩冶判官某両人承はる所に尊氏たかうぢ将軍しやうぐんよりの仰にて高師直を御そへ人万事彼下知けちに任せ御馳走申よ年ばいといひ諸事物なれたる侍と御したかかつに乗て日頃の我まゝはいまし都の諸武士なみ居る中若年しやくねんの某を見込雑言ざうこんくはまつ二つにと思へ共お上の仰をはゝかり堪忍の胸をへしは幾度いくたひ明日は最早もはや了簡りやうけんならず御前にて恥面はちつらかゝせる武士の意路ゐち其上にて討て捨る必留るな日比某を短慮たんりよと奥を始め其方が異見ゐけん幾度いくたびか胸にとつくと合点なれ共無念重る武士の性根しやうね家の断絶たんぜつ奥が歎き思はんにてはなけれ共刀の役目弓矢神への恐れ戦場せんちやうにて討死はせず共師直一人討て捨れば天下の為家の恥辱にはかへられぬ必々短氣たんき故に身を果す若狭助いのしゝ武者ようろたへ者と世の人口じんこうを思ふ故汝にとつくと打明すと思ひ込たる無念の涙五さうつらぬく思ひなる横手を打てしたり〱ムヽようわけをおつしやつたよう御了簡りやうけんなされた此本蔵なら今迄了簡はならぬ所ヤイ本蔵ナヽなんと云た今迄はよう了簡した堪忍かんにんしたとはわりや此若狭助をさ

地:戦場にて,ウ:戦場にて地/ウ

ハル:師直ハル

ウ:天下の

ウ:家の

中:かへられぬ

ウ:必

ハル:身をハル

ウ:猪

ウ:世の

中:思ふ

ウ:汝に

ハル:思ひ込たるハル

スヱ:五臓をスヱ

中:思ひなる

地色:横手を,ウ:横手を地色/ウ

ハル:打てハル

色:したり

詞:ムヽ