御使者に参れと主人判官申付候故右の仕合此通若狭助様へ御申上下さるべしと水を流せる口上に小浪はうつかり顔見とれとかふ答もなかりけりヲヽ聞た〱使太義と若狭助一間ゟ立出昨日お別れ申てより判官殿間違てお目にかゝらす成程正七つ時に貴意得奉らん委細承知仕る判官殿にも御苦労千万と宜敷申伝へてくれられよお使者太義然らばお暇申上んナニお取次の女中御苦労としづ〱立て見向もせず衣紋繕ひ立帰る本蔵一間ゟ立かはりハア殿是に御入弥明朝は正七つ時に御登城御苦労千万今宵も最早九つ暫く御間眠遊ばされよ成程〱イヤ何本蔵其方にちと用事有密々の事小浪を奥へ〱ハアコりや〱娘用事あらば手を打ふ奥へ〱と娘を追やり合点の行ぬ主人の顔色と御傍へ立寄先程よりお伺ひ申さんと存せし所委細具に御仰下さるべしと指寄ばにじり寄本蔵今此若狭助が云出す一言何によらず畏奉ると二言と返さぬ誓言聞ふハア是は〱あらたまつた御詞畏入奉ではござれ共武士の誓言はならぬといふのかイヤ左にあらず先委細とつくと承はり子細をいはせ跡で異見かイヤそれは詞を背くかサア何とハツはつと斗指うつむき暫く詞なかりしが胸を極て指添抜片手に刀抜出してう〱〱と金打し本蔵が心底かくの通とゞめも
御使者に参れと主人判官申付ケ候故右の仕合此通リ若狭ノ助様へ御申上ケ下さるべしと水を流せる口上に小浪はうつかり顔見とれとかふ答もなかりけりヲヽ聞た〱使イ太義と若狭ノ助一ト間ゟ立出昨日お別れ申てより判官殿間違てお目にかゝらす成ル程正七つ時に貴意得奉らん委細承知仕る判官殿にも御苦労千万ンと宜敷申伝へてくれられよお使者太義然らばお暇申シ上ゲんナニお取次の女中御苦労としづ〱立て見向もせず衣紋繕ひ立帰る本蔵一ト間ゟ立かはりハア殿是に御入弥明朝は正七つ時に御登城御苦労千万ン今宵も最早九つ暫く御ン間眠遊ばされよ成程〱イヤ何本蔵其方にちと用事有密々の事小浪を奥へ〱ハアコりや〱娘用事あらば手を打ふ奥へ〱と娘を追イやり合点の行ぬ主人の顔色と御傍へ立寄リ先キ程よりお伺ひ申さんと存せし所委細具に御仰下さるべしと指寄レばにじり寄本蔵今此若狭ノ助が云出す一チ言何によらず畏奉ると二言ンと返さぬ誓言聞ふハア是は〱あらたまつた御詞畏リ入奉ルではござれ共武士の誓言ンはならぬといふのかイヤ左にあらず先ツ委細とつくと承はり子細をいはせ跡で異見かイヤそれは詞を背くかサア何ンとハツはつと斗指うつむき暫く詞なかりしが胸を極メて指添抜片手に刀抜出してう〱〱と金打し本蔵が心底かくの通リとゞめも
ウ:小浪はウ
フシ:とかふフシ
地色:ヲヽ,ハル:ヲヽ地色/ハル
ウ:若狭助ウ
ウ:一間ゟウ
色:立出色
詞:昨日詞
地:しづ〱,ウ:しづ〱地/ウ
ハル:立て見ハル
フシ:衣紋フシ
地:本蔵,ハル:本蔵地/ハル
色:立か色
詞:ハ詞
地:〱と,ウ:〱と地/ウ
色:追やり色
ウ:合点のウ
ウ:顔色とウ
ハル:御傍へハル
色:立寄色
詞:先詞
地:下さるべしと,ウ:下さるべしと地/ウ
ハル:指寄ばハル
ハル:にじり寄,色:にじり寄ハル/色
詞:本蔵詞
地色:ハツ,ハル:ハツ地色/ハル
フシ:暫くフシ
地:胸を,ハル:胸を地/ハル
ウ:片手にウ
ウ:てう〱〱とウ
色:金打し色
詞:本蔵が詞