何にも様子は存ませぬとのお返事御病氣のさはりお家の恥に成事ならアヽこれ〱となせそれ程のお返事なぜ取繕ふて申上ぬ主人は生得御短慮成お生れ付何の詞諍ひなどゝは女わらべの口くせ一言半句にても舌三寸の誤りより身をはたすが刀の役目武士の妻でないかそれ程の事に氣が付ぬか嗜めさ〱ナニ娘そちは又御代参の道すがら左様の噂はなかりしか但有たかナニないヲヽ其筈〱ハヽヽヽヽヽなんのべしてもない事をよし〱奥方のお心休め直にお目にかゝらんと立上る折こそあれ当番の役人罷出大星由良助様の御子息大星力弥様御出なりと申上るムヽお客御馳走の申合せ判官殿ゟのお使ならんこなたへ通せコレとなせ其方は御口上受取殿へ其通り申上られよお使者は力弥娘小浪と云号の婿殿御馳走申しやれ先奥方へ御対面と云捨一間に入にけるとなせは娘を傍近くなふ小浪とゝ様のかたくろしいは常なれど今おつしやつた御口上請取役はそなたにと有そな所をとなせにとは母が心とはきつい違ひそもじも又力弥殿の顔も見たかろ逢たかろ母にかはつて出むかやゝいやか〱と問返せばあい共いや共返答はあからむ顔のおぼこさよ母は娘の心を汲アイタヽヽ娘せなを押てたも是は何と遊ばせしとうろたへさはげばイヤなふけさからの心つかひ又持病の癪が指込だ是で
何にも様子は存ませぬとのお返事御病氣のさはりお家の恥に成ル事ならアヽこれ〱となせそれ程のお返事なぜ取繕ふて申シ上ぬ主人は生得御短慮成ルお生れ付キ何の詞諍ひなどゝは女わらべの口くせ一チ言ン半句にても舌三寸の誤りより身をはたすが刀の役目武士の妻でないかそれ程の事に氣が付カぬか嗜めさ〱ナニ娘そちは又御代参の道すがら左様の噂はなかりしか但シ有ツたかナニないヲヽ其筈〱ハヽヽヽヽヽなんのべしてもない事をよし〱奥方のお心休め直キにお目にかゝらんと立上る折こそあれ当番の役人罷リ出大星由良ノ助様の御子息大星力弥様御出なりと申シ上るムヽお客御馳走の申シ合せ判官殿ゟのお使イならんこなたへ通せコレとなせ其方は御口上受ケ取殿へ其通り申シ上ケられよお使者は力弥娘小浪と云号の婿殿御馳走申しやれ先ツ奥方へ御対面と云捨一ト間に入にけるとなせは娘を傍近カくなふ小浪とゝ様のかたくろしいは常なれど今おつしやつた御口上請取役はそなたにと有リそな所をとなせにとは母が心とはきつい違ひそもじも又力弥殿の顔も見たかろ逢たかろ母にかはつて出むかやゝいやか〱と問返せばあい共いや共返答はあからむ顔のおぼこさよ母は娘の心を汲アイタヽヽ娘せなを押シてたも是は何ンと遊ばせしとうろたへさはげばイヤなふけさからの心つかひ又持病の癪が指込だ是で
地色:何にも,ウ:何にも地色/ウ
ハル:お返事ハル
ウ:御病氣のウ
中:事なら中
詞:アヽ詞
地:直に,ウ:直に地/ウ
ハル:かゝらんとハル
フシ:立上るフシ
地:当番の,ハル:当番の地/ハル
色:罷出色
詞:大星詞
詞:ムヽ詞
地:先,ハル:先地/ハル
ヲクリ:云捨ヲクリ
地色:となせは,ウ:となせは地色/ウ
色:なふ色
詞:とゝ様の詞
地:いやか,ウ:いやか地/ウ
ハル:あい共ハル
ウ:返答はウ
フシ:あからむフシ
地:母は,色:母は,ウ:母は地/色/ウ
色:アイタヽヽ色
ハル:是はハル
ウ:遊ばせしとウ
色:イヤ色
詞:けさからの詞