殿殿殿
イヤア師直もろなをに向つて卒尓そつじとは出過たり義貞討死したる時は大わらは死骸しがいそば落散おちちつたる兜の数は四十七どれがどふ共見しらぬ兜そふで有ふと思ふのを奉納ほうなふした其跡でそふでなければ大きな恥なま若輩じやくはいなりをしてお尋もなきひやうすつこんでお居やれと御前よきまゝ出る侭にくゐ共思はぬ詞の大づち打込れてせき立色目塩冶ひつ取てコハ御尤成御評義ながら桃井もゝのゐ殿の申さるゝもおさま代の軍法ぐんぽう是以て捨られず双方さうほうまつたき直義公の御賢慮けんりよあをぎ奉ると申上れば御機嫌きげん有ホヽ左いはんと思ひしゆへ所存しよぞんて塩冶が婦妻ふさいを召シ連と云付し是へまねけと有ければはつとこたへの程もなく馬場ばゞ白砂しらすな素足すあしにてすそにははくうちかけは神の御前の玉はゞき玉もあさむくうす化粧けしやう塩冶が妻のかほよ御前はるかさがつてかしこまる女ずきの師直其侭声かけ塩冶殿の御内室ないしつかほよ殿さいぜんよりさぞとを御太義〱御前のお召ちかふ〱と取持顔直義御らんじ召出す事外ならずいんじ元弘けんかうみたれ後醍醐帝ごだいこてい都にて召れし兜を義貞に給はつたればさいの時につらん事うたがひはなけれ共其兜を誰て見しる人外になし其比は塩冶が妻十二の内侍ないしの其内にて兵庫司ひやうごづかさの女官なりと聞及ぶ嘸見知あらんず覚へ

詞:イヤア

地:すつこんで,ハル:すつこんで地/ハル

ウ:御前

ウ:出る

ウ:打込れて

ウ:せき立色

ウ:塩冶

色:ひつ取て

詞:コハ

地:是,ウ:是地/ウ

ハル:御賢慮ハル

色:御機嫌

詞:ホヽ

地色:はつと,ハル:はつと地色/ハル

中:なく

ウ:素足にて

ハル:襠はハル

長地:神の,ウ:神の長地/ウ

中:うす化粧

詞:かほよ御前

フシ:遥フシ

地:女,ハル:女地/ハル

ウ:其

色:声

詞:塩冶殿の

地:御前の,ウ:御前の地/ウ

ハル:取持顔ハル

ウ:直義

色:御覧じ

詞:召出す事