駿
駿
ヤア待汝等麁忽そこつすなと声をかけて義経公烏帽子ゑぼし狩衣かりきぬつくろ物具ものゝぐならぬ御出立行幸ぎやうかう道をさゝへ君臣の礼をみだる其憚すくなからずしづまれかた〲いざ義経も天皇を御見送り奉らん用意ようゐしやうぞくかくのごとし教経一人帰せし迚天に入徳もなく地に入じゆつもあらばこそ何のがれなき命汝等が手にかけず此所に有合さぬ忠信に討すれば兄次信が敵を討修羅しゆら妄執もうしうさんずる道理教経は世せばき身義経も世を憚る身互に城もたてもなき戦場せんじやう吉野の花矢倉に勝負しやうぶ〱をけつすべし天皇入水と披露ひらうして内裏だいりだればたとへ勝共負る共君にあやまち致されなホ神妙しんべうの詞満足まんぞくせり些細さゝいの事にかゝはらぬ教経義経計をねらひはせじ天下にかさどる頼朝が素頭すかうべて君が代にひるがへさん其時は義経には荘園しやうゑんを申下して得さすべしヤアことくどし教経義経をねらはゞ其儘兄頼朝に敵対てきたふとは聞捨ならずと御大将御帯刀はかせに手をかけてすはやと見ゆる腹心ふくしんに分なだむる源九郎狐名をかりのおん忠信がほゐなき思ひしづむるとは目にこそ見へね君の守護しゆごさらばよ義経去にても帝のお命助たる情の礼には教経共能登守共名乗ては敵対てきたはぬが我返報へんぽう再会さいくはいの名は横川の覚範吉野山にて忠信に出くはして勝負しやうぶせん互の命は其時〱行幸ぎやうがう成ぞ雑人原ざうにんばら路次ろしけいと呼はつて又抱上る安徳帝君々たれど君たらず臣々たれど臣たらぬ横川の覚範供奉ぐぶの役敵々ながら義経が警蹕けいひつの声高々と威義ゐぎ意趣ゐしゆ情有河連法眼先駆せんぐの役駿

詞:ヤア

地:烏帽子,ハル:烏帽子地/ハル

フシ:物具ならぬフシ

詞:行幸の

地:互に,ウ:互に地/ウ

ウ:戦場

ハル:花矢倉にハル

色:決すべし

詞:天皇

地:聞捨ならず,ウ:聞捨ならず地/ウ

ハル:御大将ハル

ウ:すはやと

中:腹心に

ウ:分入

ウ:源九郎狐

ウ:名を

ハル:忠信がハル

ウ:ほゐなき

色:君の

詞:さらばよ

謡:行幸,詞:行幸謡/詞

地:又,中:又地/中

ウフシ:安徳帝ウフシ

地:君,ハル:君地/ハル

色:君たらず

ウ:臣

ハル:横川のハル

ウ:敵

ウ:高々と

ウ:意趣

色:情

コハリ:河連法眼,ウ:河連法眼コハリ/ウ

ウ:駿