けられ思はずきつと見返りしがムウ声有て形なきは我を呼にはあらざりし覚へなき名に驚て思はぬ氣おくれハヽヽヽヽ人なくて恥かゝざりしと独言して行所をヤア卑怯な教経能登守九郎判官義経がとくより是に待かけたりと障子さつと押ひらく見るより覚範望む所長刀柄ながくかいこんで飛かゝらんず顔色にちつ共憶せず完尓と笑ひげに紅の旗印は衆徒にやつせど隠れなし水練に名高き教経八嶋の沖に入水と見せ底を潜つてうかみ出此世に有とはとくより知てまがひなき面躰あらがはれなと優美の詞ホヽさかしくも云たりな教経にもせよ誰にもせよ汝に敵対覚範に物の具もせず出合は此場を助て囉ひたさの追従命惜さに骨折は苦労九郎とあざ笑へばヤア我は顔成云事かな弓勢には及ばず共太刀打手練は負べきや天命に盡たる平家の刃義経が身に立ばサア立て見られよ能登守といはせもあへず上段に薙でかゝるを小太刀にてからりてう〱はつしと受もどく長刀鐏にて胴腹ぬかんとつつかくるをはつたと蹴させて付入にぞあしらひ兼て義経は詞にも似ず逃て入遁さじやらじと奥の間の隔の障子蹴はなし〱かけ行向ふにこはいかに玉座を設安徳帝﨟たけなる御姿コハ〱勿躰なや浅間しや何とて爰にましますと胸打さはぎ奏聞す君はけたかき御声にて尼
けられ思はずきつと見返りしがムウ声有ツて形なきは我を呼にはあらざりし覚へなき名に驚キて思はぬ氣おくれハヽヽヽヽ人なくて恥かゝざりしと独言して行所をヤア卑怯な教経能登ノ守九郎判官義経がとくより是に待かけたりと障子さつと押シひらく見るより覚範望む所長刀柄ながくかいこんで飛かゝらんず顔色にちつ共憶せず完尓と笑ひげに紅の旗印は衆徒にやつせど隠れなし水練に名高き教経八嶋の沖に入水と見せ底を潜つてうかみ出此世に有とはとくより知ツてまがひなき面躰あらがはれなと優美の詞ホヽさかしくも云ツたりな教経にもせよ誰レにもせよ汝に敵対覚範に物の具もせず出合は此場を助ケて囉ひたさの追従命惜さに骨折ルは苦労九郎とあざ笑へばヤア我は顔成云事かな弓勢には及ばず共太刀打手練は負べきや天命イに盡たる平家の刃義経が身に立タばサア立テて見られよ能登ノ守といはせもあへず上段に薙でかゝるを小太刀にてからりてう〱はつしと受ケもどく長刀鐏にて胴腹ぬかんとつつかくるをはつたと蹴させて付ケ入にぞあしらひ兼て義経は詞にも似ず逃ケて入ル遁さじやらじと奥の間の隔の障子蹴はなし〱かけ行向ふにこはいかに玉座を設安ン徳ク帝﨟たけなる御姿コハ〱勿躰なや浅間しや何とて爰にましますと胸打さはぎ奏聞す君はけたかき御声にて尼
地:思はず,ハル:思はず地/ハル
色:見返りしが色
詞:ムウ詞
地:恥,ウ:恥地/ウ
ハル:独言ハル
色:行所を色
詞:ヤア詞
地:障子さ,ハル:障子さ地/ハル
中:長刀,ウ:長刀中/ウ
ハル:飛かゝらんずハル
ウ:憶せずウ
色:完尓と色
詞:げに詞
地色:命,ウ:命地色/ウ
詞:我は詞
地:いはせも,ハル:いはせも地/ハル
色:小太刀にて色
ハル:からりハル
色:はつしと色
詞:もどく,ノリ:もどく詞/ノリ
地:あしらひ,ハル:あしらひ地/ハル
フシ:詞にもフシ
地:遁さじ,ハル:遁さじ地/ハル
ウ:かけ行ウ
色:こは色
ウ:玉座をウ
ウ:安徳帝ウ
ウ:﨟たけなる,ハル:﨟たけなるウ/ハル
ウ:勿躰なやウ
ウ:何とてウ
フシ:胸フシ
ハル:君はハル
中:御声にて中
詞:尼詞