殿駿使殿殿
殿駿使殿殿
見参げざんに入んといさみ行義経ならぬ源九郎が計略けいりやくとこそしられたり次へ来るは梅本のおに佐渡さどでもつかみくらはんつらに見へぬ源九郎につまゝれくるとは白衣しろころもの袖押くつて屋敷くまにらみ廻しイヤ法眼殿只今は早々の仕合まだ帰られじと思ふたに何もかも手ばしかいシテ囚人めしうとはとでかし顔なるはなの下長廊下ながらうかをやり過しかへす板間ふみべりする〱駿河にふみのめされ無念〱の手間ひまいらず同じく奥へ引立行扨三番めは坂の薬医やくゐ坊くる〱道も仏頂面ぶつてうつらヤレせはしはてせはしいくはいやいまあ待やいこりや其様に引ずるな衣や着物きものやぶれるはい扨々無礼な使じやと源九郎にばかされて何をいふやらわけもなき中にしはさはこもりけるヲヽ待かねし薬医坊サア〱こちへと寄顔で小腕ぐつと捻上ればアイタヽヽヽこりや何とするヲヽかうするとそれながら大の法師を引かづき貴殿きでん法眼が手料理の馳走ちさうぶり義経公の献立こんだてを待て切かた致さんと笑ふて奥に入にける勇氣の程ぞたぐひなきかく白刃しらはの大長刀なぎなたいしづき土につきならし衣の下は海老胴ゑびどうぐさかしら袈裟けさにひんまとひゆらり〱と入たるは只物ならぬ横川よかは覚範かくはんにはに二王立河連殿はいづくに有客僧是へ参入さんにうせり奥へ推参すいさん申さんかとく〱対面たいめん〱と呼はりながらあゆみうしろ障子しやうじの内よりも平家の大将能登のとのかみ教経のりつねと声か

ウ:見参に

ウ:義経ならぬ

フシ:計略とフシ

地:次へ,ハル:次へ地/ハル

色:鬼佐渡

ウ:何でも

ハル:頬付ハル

ウ:源九郎に

ウキン:つまゝれウキン

中:白衣の

ウ:袖

ハル:屋敷のハル

色:睨廻し

詞:イヤ

地色:シテ,ウ:シテ地色/ウ

ウ:でかし顔なる

ハル:鼻のハル

中:踏すべり

ウ:する〱駿

ハル:無念ハル

フシ:同じくフシ

地色:扨,ウ:扨地色/ウ

ハル:薬医坊ハル

ウ:くる〱道

ウ:仏頂面,合:仏頂面ウ/合

詞:ヤレ

地:源九郎に,ハル:源九郎に地/ハル

中:中に,フシ:中に中/フシ

地色:ヲヽ,ウ:ヲヽ地色/ウ

ウ:こちへ

ハル:小腕ハル

色:アイタヽヽヽ

ウ:かう

ウ:それながら

ハル:大のハル

中:貴殿,ウ:貴殿中/ウ

ウ:義経公の

ハル:致さんハル

ウ:笑ふて

ウ:入にける

フシ:勇氣のフシ

地:斯と,ハル:斯と地/ハル

中:つきならし

キン:衣のキン

ウ:海老胴

フシ:頭は,ハル:頭はフシ/ハル

色:ひんまとひ

下:ゆらり,キン:ゆらり下/キン

ウ:〱と入

ハツミ:只物ならぬハツミ

色:横川の

詞:大庭に,ノリ:大庭に詞/ノリ

地:とく〱対,ハル:とく〱対地/ハル

ウ:〱と

フシ:呼はりフシ

地:後の,ハル:後の地/ハル

色:内よりも

詞:平家の