〱それ〱〱ても早ふ爰へ来てじや一所にお目にかゝる物をちつとの間に先へ抜がけま軍場いくさばかと思ふてかまんがちな人では有うらみ口成詞に不しんばいはれぬ四郎忠信我君も其ごとく覚なき御拙者せつしやめは今の先出羽の国からもどりがけ去年おいとまてからお目にかゝるは只今始てヱヽあの人のじやら〱とてんがうな事計てんがうでなし大真実しんじつアレまだ真顔まがほでだますのかと何なまめく詞の中立戻る亀井の六郎静様同道の忠信引来らんと存ぜし所次の間にも有合さず玄関げんくはん長屋所々方々尋ても知ず候とに心まよはせ給ひコレ静爰に居るは其方を預たる忠信ならず只今国より帰りしと物語する中忠信静を同道どう〱との案内あんない二人有中にも見へざるは不しん面躰めんていたるにせ者ならずや静心が付ざるかと仰の中に忠信をつれ〱と打ながめハアどふやらそふおつしやれば小袖もなりちがふて有アヽお待遊ばせやハツアそれかヲヽそふじや思ひあたる事が有君がかたみと別れし時たまはりし初音の鼓御覧遊ばせ此様にはだ身もはなさず手にふれて忠信のかいほう八幡山ざき小倉おぐらの里所々に身を忍び居たりしに折々の留守るすの内君恋しさの此鼓打てなぐさむ度々忠信帰らぬ事もなく其音をかんたゆる事ほんにさゝの過た人同前打やめばきよろりつと何ない顔付はよく〱鼓がすきそふなと初手しよては思ひ二度

色:それ

ウ:ても

ウ:一所に

ウ:ちつとの

ウ:抜がけ

ウ:まだ

ウ:思ふてか

ウ:人では

ウ:恨口

ウ:一倍

色:四郎

詞:我

ハル:じやら〱とてんハル

中:事計

詞:てんがうで

地色:アレ,中:アレ,ウ:アレ地色/中/ウ

ハル:真顔でハル

フシ:何氣も,ハル:何氣もフシ/ハル

ウ:詞の

ウ:立戻る

色:六郎

詞:静様

地:申に,ハル:申に地/ハル

中:迷はせ,キン:迷はせ中/キン

詞:コレ

地色:静,ハル:静地色/ハル

ウ:仰の

中:打ながめ

詞:ハア

地:思ひ,フシ:思ひ地/フシ

ウ:君

ウ:別れし

ハル:給はりしハル

ウ:御覧

中:肌身も

ウ:忠信の

ハル:受ハル

ウ:八幡

ウ:所々に

中:居たりしに

ウ:折々の

ハル:内ハル

ウ:君

ウ:打て

色:度々

詞:忠信

地:顔付は,ハル:顔付は地/ハル

ウ:好そふな

色:二度