殿退殿殿
殿退殿殿
荒法橋あらほつきやうと名を呼れのつか〱とくる跡に鬼と名乗は違はぬ悪者梅本の鬼佐渡おにさどかへり坂の薬医やくゐ坊清僧ながら大太刀はき大口の裾踏すそふみちらしけふの評定ひやうぢやう真先まつさきかけない智恵ちゑふるはんつら也今迄のふずな百性共さか様にはひかゞめば鬼佐渡あたりにらみ廻しまだ掃除さうぢ仕廻しまはぬな先て云渡すにのらかはいて隙入年貢ねんく時分じぶんに待ておろとしかりられハイ〱〱当まなこてんでにはうきどつさくさ風上からはき廻せば袈裟けさも衣も土ぼこりごくどうめらこりや何しをるとしかる程猶遠慮ゑんりよなふ掃除さうぢしますと無二無三ほこりかづけて逃帰る爰に河連法眼かはつらはうけんとて一山の検校職けんげうしよく花美くはびこのま萌黄もへぎ法服ほうふく歩路かちゝをきたる指貫さしぬきもしめくゝり有仁躰じんたいホヽウいづれも早かりつと互に前後の挨拶あいさつおの〱円座ゑんざつらなれりやゝ有て河連法眼先回状くはいじやうを以て申せし所早々の参会さんくはい祝着しうちやく今日の談合の義にあらずと懐中くはいちうより一通を取出し鎌倉殿の家臣我小舅こじうといばら左衛門よりかくごとき書状到来たうらい言をよみ聞さば申さず共様子は明白先聞れよと押ひろげ飛札ひさつを以て申す九郎判官義経の事弟の身として舎兄しやきやう頼朝追討ついとう院宣ゐんぜんかうむあまつさへ土佐坊正尊討取都を立退のき大和路に徘徊はいくはいの由其聞へによつて鎌倉殿御いきどをり大方ならず早く討て出べきのむね国々へ配府はいふを廻らしおはんぬおんしやうらるべく候隠においては一山の滅亡めつぼう此時に候也正月十三日河連法眼殿いばら

ハル:荒法橋とハル

中:呼れ

ハル:のつかハル

下:鬼と

ウ:違はぬ

ウ:梅本の

色:薬医坊

フシ:清僧,ハル:清僧フシ/ハル

ウ:大口の

色:踏ちらし

道具や:けふの,ハル:けふの道具や/ハル

ウ:評定

ウ:ない

ナヲス:頬付,フシ:頬付ナヲス/フシ

地:今迄の,ハル:今迄の地/ハル

ウ:鬼佐渡

色:睨廻し

詞:まだ

地色:おろと,ウ:おろと地色/ウ

ハル:当ハル

ウ:風上

ウ:ごくどうめら

ウ:呵る

ウ:掃除

フシ:ほこりフシ

地:爰に,ウ:爰に地/ウ

ハル:検校職ハル

中:法服

ウ:歩路

ハル:しめくゝりハル

色:仁躰

詞:いづれも

地色:互に,ウ:互に地色/ウ

ハル:挨拶ハル

ウ:各

フシ:列れりフシ

地:やゝ,ハル:やゝ地/ハル

色:河連法眼

詞:先達て

地:懐中より,ハル:懐中より地/ハル

色:一通を

詞:鎌倉殿の