らおふて野道あぜ道ゆらり〱かるい取なりいそ〱と目立ぬやうに道隔女中の足と侮つて嘸お待兼爰幸の人目なしと姓名添て給はりし御着長を取出し君と敬ひ奉る静は鼓を御顔とよそへて上に沖の石人こそしらね西国へ御下向の御海上波風あらく御船を住吉浦に吹上られそれより芳野にまします由やがてぞ参り候はんと互に筺を取納めげに此鎧を給はりしも兄次信が忠勤也八嶋の戦ひ我君の御馬の矢表に駒をかけすへ立ふさがるヲヽ聞及ぶ其時に平家の方には名高き強弓能登守教経と名乗もあへずよつぴいてはなつ矢先はうらめしや兄次信が胸板にたまりもあへずまつさか様あへなきさいごは忠臣義死の名を残す思ひ出るも涙にて袖はかはかぬつゝ井筒いつか御身ものびやかに春の柳生の糸長く枝を連る御契りなどかは朽しかるべきと互に諫いさめられ急ぐとすれどはかどらぬあし原峠かうの里土田六田も遠からぬ野路の春風吹はらひ雲と見まがふ三芳野の麓の里にそ〽着にける
らおふて野道あぜ道ゆらり〱かるい取なりいそ〱と目立タぬやうに道隔女中の足と侮つて嘸お待チ兼爰幸イの人目なしと姓名添て給はりし御ン着長を取リ出し君と敬ひ奉る静は鼓を御ン顔とよそへて上に沖の石人こそしらね西国へ御ン下向の御海上波風あらく御船を住吉浦に吹キ上ケられそれより芳野にまします由やがてぞ参り候はんと互に筺を取納めげに此鎧を給はりしも兄次信が忠勤也八嶋の戦ひ我君の御ン馬の矢表に駒をかけすへ立ふさがるヲヽ聞及ぶ其時に平家の方には名高き強弓能登守教経と名乗もあへずよつぴいてはなつ矢先キはうらめしや兄次信が胸板にたまりもあへずまつさか様あへなきさいごは忠臣義死の名を残す思ひ出るも涙にて袖はかはかぬつゝ井筒いつか御ン身ものびやかに春の柳生の糸長く枝を連る御契りなどかは朽しかるべきと互イに諫いさめられ急ぐとすれどはかどらぬあし原峠かうの里土田六田も遠からぬ野路の春風吹キはらひ雲と見まがふ三芳野の麓の里にそ〽着にける
ウ:野道ウ
合:ゆらり合
合:〱合
ウ:かるいウ
ナヲス:いそ〱,フシ:いそ〱ナヲス/フシ
地:目立ぬ,中:目立ぬ,△:目立ぬ地/中/△
ハル:道ハル
ウ:女中のウ
色:侮つて色
詞:嘸詞
地:姓名,中:姓名地/中
ハル:御着長を,スヱ:御着長をハル/スヱ
中:取出し中
ノル:君とノル
フシ:敬ひ奉るフシ
中:静は,○:静は中/○
ウ:よそへてウ
ハル:沖のハル
長地:人こそ,ウ:人こそ長地/ウ
ウ:御下向のウ
ウ:御海上ウ
ウ:波風ウ
中:御船を中
表具:住吉浦に,ウ:住吉浦に表具/ウ
ハル:それよりハル
ウ:ましますウ
二人:やがて,ウ:やがて二人/ウ
ナヲス:筺を,フシ:筺をナヲス/フシ
△:げに,地:げに,中:げに△/地/中
ウ:兄ウ
ウフシ:忠勤ウフシ
中:八嶋の中
ハル:我ハル
ウ:御馬のウ
色:立ふさがる色
○:ヲヽ○
ウ:聞及ぶウ
ウ:其ウ
合:時に合
中キン:平家の中キン
ハル:名高きハル
合:強弓合
ウ:能登守ウ
ウ:名乗もウ
ウ:よつぴいてウ
合:はなつ合
△:矢先は△
ウ:兄ウ
ウ:まつさか様ウ
二人:あへなき,上:あへなき二人/上
ウ:忠臣ウ
ウ:義死のウ
ウ:名をウ
ウ:思ひ出るもウ
ウ:涙にてウ
中:袖は中
ハルフシ:いつかハルフシ
中:のびやかに中
ウ:春のウ
ウ:枝をウ
ウ:などかはウ
ウ:諫ウ
ウ:急ぐとウ
中:はかどらぬ中
ウ:あし原峠ウ
ハル:かうの里ハル
ウ:土田ウ
ウ:春風ウ
ウ:見まがふ,入:見まがふウ/入
ウ:三芳野のウ
ウ:里にそウ
上:着にける上