殿
は何とゝ尋られおれが口からまんざらにいがみの権とは得いはず悪者の子じや故にはね出されておるであろと思ふ程猶そちがにくさ今なを根性こんしやうが半年前に直つたらのふばゞ親父殿嫁女よめんぢよや孫の顔見おぼへておこふのにヲヽ〱〱おれもそればつかりがとむせかへりわつと計伏沈ふししづむ心ぞ思ひやられたり内侍は始終しゞう涙惟盛卿は身にせまるいとゞ思ひにかきくれ給ひ弥左衛門が歎さる事なれ共あふわかれあはで死るも皆因縁ゐんゑんが討て帰りたる首は主馬しゆめの小金吾迚内侍が供せし譜代ふだい家来けらいつくせし忠義はうすく死て身がはる忠勤ちうきんあつし是もふしぎの因縁ゐんゑんと語り給へばテモ扨もそんなら是も鎌倉の追手の奴等やつらが皆所為しわざヲヽ云にや及ぶ右大将うだいしやう頼朝よりともせいにはびこる無得心むどくしん一太刀うら残念さんねんいかりまじる御げにお道理と弥左衛門梶原が預たる陣羽織ぢんばおりを取出し是は頼朝ががへ迚褒美ほうひ合紋あいもんに残し置〱に引さいても御一の数にはたらねと一さきづゝの御手向たむけサア遊ばせと指出す何頼朝ががへとやしん豫譲よじやうためしを引衣をさいて一うらみはらさん思ひ知と御はかせに手をかけて羽織はおりを取て引上給へばうら模様もやうか哥の下の句内やゆかしき内ぞ床しきと二つならべて書たるはアラ心得ず此哥は小町が詠哥ゑいか雲の上は有し昔にかはら

地:悪者の,ウ:悪者の地/ウ

ハル:故にハル

ウ:はね出されて

上:あろと

ウ:思ふ

ウ:今

詞:のふ

地:孫の,ハル:孫の地/ハル

上:おこふのに

ウ:おれも

ウ:むせかへり

中:心ぞ,ノル:心ぞ,フシ:心ぞ中/ノル/フシ

ハル:思ひやられたりハル

地:内侍は,ハル:内侍は,三:内侍は地/ハル/三

ウ:惟盛卿は

ウ:いとゞ

色:かきくれ給ひ

詞:弥左衛門が

地:生て,中:生て,六:生て地/中/六

ウ:忠義は

ハル:うすくハル

ウ:死て

上:是も

詞:テモ

地:一太刀,ハル:一太刀地/ハル

スヱ:怒にスヱ

中:御涙

ウ:実

ハル:弥左衛門ハル

ウ:梶原が

色:取出し

詞:是は

地:遊ばせ,ハル:遊ばせ地/ハル

色:指出す

詞:何

地色:御はかせに,ハル:御はかせに地色/ハル

中:引上給へば

ウ:裏に

ハル:哥のハル

色:下の句

詞:内や