銀じやこりやどふじやと𩊆果たる計也手負は顔を打ながめおいとしや親父様私が性根が悪さに御相談の相手もなく前髪の首を惣髪にして渡さふとは了簡違のあぶない所梶原程の侍が弥助と云て青二才の男に仕立有事をしらいで討手に来ませうかそれといはぬはあつちも工惟盛様御夫婦の路銀にせんと盗だ銀重いを證拠に取違へた鮓桶明て見たれば中には首はつと思へど是幸月代剃てつき付たはやつぱりおまへの仕込の首ムウ其又根性で御臺若君に縄をかけなぜ鎌倉へ渡したぞホ其お二人と見へたのは此権太が女房躮ヤアヽして〱惟盛様御夫婦若君は何国にヲヽ逢せませうと袖より出す一文笛吹立れば折よしと惟盛卿内侍は茶汲の姿となり若君連てかけ付給ひ弥左衛門夫婦の衆権太郎へ一礼をヤア手を負たかと驚もおかはりないかと恟りも一度に興をぞさましける母は悲しさ手負に取付かほど正しき性根にて人に疎まれ譏らるゝ身持はなぜにしてくれた常か常なら連合がむさと手疵も負せまいむごい事をとせき上て悔歎けば権太郎ヤレ其お悔無用〱常が常なら梶原が身がはりくふては返りませぬまだ夫さへも疑て親の命を褒美にくれう忝いといふと早詮義に詮義をかける所存いがみ
銀じやこりやどふじやと𩊆果たる計リ也手負は顔を打ながめおいとしや親父様私が性根が悪ルさに御相談の相手もなく前髪の首を惣髪にして渡さふとは了簡違のあぶない所梶原程の侍が弥助と云て青二才の男に仕立テ有ル事をしらいで討ツ手に来ませうかそれといはぬはあつちも工惟盛様御夫婦の路銀にせんと盗だ銀重いを證拠に取リ違へた鮓桶明ケて見たれば中には首はつと思へど是幸イ月代剃てつき付ケたはやつぱりおまへの仕込の首ムウ其又根性で御臺若君に縄をかけなぜ鎌倉へ渡したぞホ其お二人と見へたのは此権太が女房躮ヤアヽして〱惟盛様御夫婦若君は何国にヲヽ逢せませうと袖より出す一チ文ン笛吹立ツれば折よしと惟盛卿内侍は茶汲の姿となり若君連レてかけ付ケ給ひ弥左衛門夫婦の衆権太郎へ一チ礼をヤア手を負たかと驚もおかはりないかと恟りも一チ度に興をぞさましける母は悲しさ手負に取付キかほど正しき性根にて人に疎まれ譏らるゝ身持チはなぜにしてくれた常か常なら連レ合がむさと手疵も負せまいむごい事をとせき上て悔歎けば権太郎ヤレ其お悔無用〱常が常なら梶原が身がはりくふては返りませぬまだ夫レさへも疑て親の命を褒美にくれう忝いといふと早詮義に詮義をかける所存いがみ
地:𩊆,フシ:𩊆地/フシ
ハルフシ:手負はハルフシ
中:打ながめ中
詞:おいとしや詞
地:袖より,ハル:袖より地/ハル
中:吹立れば中
ハル:内侍はハル
ウ:若君ウ
色:かけ付給ひ色
詞:弥左衛門詞
地:ヤア,ハル:ヤア地/ハル
ウ:おかはりウ
スヱ:一度にスヱ
地:母は,ハル:母は地/ハル
ウ:手負にウ
ウ:かほどウ
ウ:人にウ
上:譏らるゝ上
ウ:身持はウ
ウ:常かウ
ウ:むごいウ
ウ:悔ウ
色:権太郎色
詞:其詞