鹿鹿鹿
討取たりとよばゝる声はつと計に弥左衛門女房娘も氣は狂乱きやうらんいがみの権太はいかめしく若君内侍を猿縛さるしばりにちう立目通りにどつかと引すへ親父のまいすが三位惟盛を熊野浦より連帰り道にて天窓あたまそりこぼちあを二才にして弥助と名をかへ此間はほてくろしき聟ぜんさく生捕いけどつ頬恥つらはぢと存たに思ひの外手ごはいやつ村の者の手をかつてやう〱と討取首に致して持参御実検じつけんと指出すヲヽ成そりこぼち弥助といふとは存ながら先て云ぬは弥左衛門めに思ひちがひをさそふ為聞およんたいがみの権悪者と聞たがお上へたいしては忠義の者でかいた〱内侍六代生捕いけどつたなハテよいりやう夢野の鹿しかで思はずも女鹿めじか子鹿の手に入あつはれはたらき褒美ほうびには親の弥左衛門めが命ゆるしてくれうイヤ〱申親の命ぐらゐを赦してもらをと思ふて此働は致しませぬスリヤ親の命はとられても褒美ほうびがほしいかハテあのわろの命はあのわろと相対あひたひ私には兎角とかくお銀とねがへば梶原ハテ小氣味きみのよいやつ褒美くれんとちやくせし羽織はおりぬいで渡せばぶつてうづらコリヤ〱其羽織はおりは頼朝公のお召がへ何時でも鎌倉へ持来らば金銀とつりがへ嘱託そくたく合紋あいもんと聞よりいたゞき出来た〱当世とうせいかたり時行はやるによつて二ぢう取をさせぬ分別ふんべつよふした物と引がへに縄付渡せば受て首をうつはおさめ

地色:はつと計に,ハル:はつと計に地色/ハル

ウ:いがみの権太

ウ:宙引

色:引すへ

詞:親父の

地色:夢野の,ハル:夢野の地色/ハル

色:働

詞:褒美には

地:私には,ウ:私には地/ウ

ハル:願へばハル

色:梶原

詞:ハテ

地色:褒美,ウ:褒美地色/ウ

ハル:ぬいでハル

色:ぶつてう頬

詞:〱

地色:嘱託の,ハル:嘱託の地色/ハル

色:出来た

詞:当世

地色:よふした,ウ:よふした地色/ウ

ハル:引がへにハル

ウ:縄付

フシ:首をフシ