宿宿退宿
へ行のも娘はうれしくテモすいなとゝさんはなれ座敷はとなりしらずあもつきせうとヲおかしこちらは爰に天井てんじよぬけ寝て花やろと蒲団ふとん惟盛卿はつく〲と身の上又は都の空若葉の内侍ないしや若君の事のみ思ひ出されて心もすまず氣も浮ず打しほれ給ひしを思はせぶりとお里は立寄コレナこれなアヲしんき何初心しよしんあんじてぞ二世も三世もかための枕二つならべたこちやねよと先へころりと転寝うたゝねは恋のわなとぞ見へにけり惟盛枕に寄そひ給ひ是迄こそかりの情夫婦となれは二世の縁むすぶにつらき一つの云訳いひわけ何を隠そふ某は国に残せしつま子有貞女ていぢよにま見へずのおきても同し事二世のかためはゆるしてと流石さすが小松の嫡子ちやくし迚とけた様でもどこやらに親御の氣風きふう残りける神ならず佛ならねばそれぞ共しらぬ道をば行まよふ若葉の内侍は若君を宿しゆく方に預おひの事も頼まんと思ひ寄身も縁のはし此家を見かけ戸を打たゝき一夜の宿やどこひ給へば惟盛はよい退のきしほと表の方たゝくとぼそ声を寄此内は鮓商売しやうばい宿屋ではござらぬとあいそのないがあいそと成イヤこれおさなきを連た旅の女是非ぜひに一夜とのたまふにぞことはりて帰さんと戸を押ひらき月かげに見れば内侍と六代君はつと戸をさし内の様子娘の手前もいぶかしくそろ〱立

中:行のも

ハル:嬉しくハル

ウ:とゝさん

ウ:はなれ座敷は

ウ:餅つき

中:こちらは,ウ:こちらは中/ウ

フシ:蒲団フシ

地:惟盛卿は,中:惟盛卿は地/中

ウ:都の

ハル:若葉の内侍ハル

ウ:思ひ出されて

スエテ:心もスエテ

中:浮ず

フシ:打しほれフシ

地:思はせぶりと,ハル:思はせぶりと地/ハル

色:立寄

詞:コレ

地:案じてぞ,ハル:案じてぞ地/ハル

ウ:二世も

詞:二つ

地:先へ,ハル:先へ地/ハル

フシ:恋のフシ

中:わなとぞ

ハル:見へにけりハル

地色:惟盛,ハル:惟盛地色/ハル

中:寄添給

詞:是迄こそ

地:結ぶに,ハル:結ぶに地/ハル

色:一つの

詞:何を

地:二世の,ウ:二世の地/ウ

ハル:赦してハル

ウ:流石

ウ:嫡子迚

ウ:とけた

フシ:親御のフシ

地:神ならず,ウ:神ならず,サハリ:神ならず地/ウ/サハリ

ハル:それぞ共ハル

中:しらぬ,ウ:しらぬ,入:しらぬ中/ウ/入

フシ:行迷ふフシ

地:若葉の内侍は,ハル:若葉の内侍は,中:若葉の内侍は地/ハル/中

ウ:若君を

ハル:預置ハル

ウ:手負の

中:縁の

ウ:此

ハルフシ:戸をハルフシ

詞:一夜の

地:惟盛は,ウ:惟盛は地/ウ

ハル:たゝくハル

色:声を

詞:此

地:あいその,ハル:あいその地/ハル

フシ:あいそとフシ

詞:イヤ

地:旅の,ハル:旅の地/ハル

スヱ:是非にスヱ

地:断,ウ:断地/ウ

ウ:見れば

ハル:六代君ハル

ウ:はつと

ウ:娘の