退殿綿
いがみの権太を頼んでおこふと五人組山道行ば弥左衛門坂へおりしも行先の手おひにばつたり行あたりはつと飛退のき氣味きみわるながら挑燈ちやうちんふり上そろ〱立寄テモむごたらしう切たは〱旅人そふなが追剥おひはぎ仕業しわざならば丸はだかにしそふな物路銀ろぎんをあてに悪者の所為しわざと悪い子を持親の身はあんすごしてコレ〱手負殿〱とよぶこたへもなきからにさて最早もはや息絶いきたへたかいとしや何国いづくの人成ぞ見ればふけた角前髪袖ふり合も他生たしやうゑんなむあみだ仏なむあみだなむあみだ仏と回向ゑかうして兎角とかく浮世は老少らうせうぢやうあはれを見るも仏のけん人はいがまず真直まつすぐ後生ごしやうたねが大事ぞと思ひつゞけて行過しが何思ひけん立留りとつつ置つのにはか思案しあんそろり〱と立戻りあたりを見廻し〱て抜身をひろひ取よりはやく死首ぱつしと打落し挑燈ちやうちんけしひつさげ忝いと弥左衛門すぐ道も横飛よことびに我家をさして〽立帰る春はこね共花さかす娘がつけすしならばなれがよかろとかいにくる風味ふうみ吉野よしの市に売弘うりひろめたる所の名物釣瓶鮓つるべずしやの弥左衛門留守るすの内に商売しやうばいにぬけめも内義が早漬はやづけに娘お里が肩綿襷かただすきすそ前垂まへだれほや〱とあいに愛持あゆすしおさへてしめてなれさするうまさかりの振袖が釣瓶鮓つるべずしとは物らしししめ木にせんを打こんおけかたて申かゝさんきのふとゝ様いはしやるにはあすの

ウ:いがみの権太を

中:五人組

ハルフシ:山道ハルフシ

地:弥左衛門,ウ:弥左衛門地/ウ

ハル:行先のハル

色:はつと

ハル:ふり上ハル

色:そろ〱

色:立寄

詞:テモ

地:悪い,ウ:悪い地/ウ

ハル:親のハル

色:過して

詞:コレ

地色:呼も,ウ:呼も地色/ウ

ハル:扨はハル

色:息絶た

詞:いとしや

地:回向して,ウ:回向して地/ウ

ウ:兎角

ウ:哀を

中:異見

ウ:人は

ハル:後生のハル

フシ:思ひフシ

地:何,ウ:何地/ウ

ハル:置つのハル

中:そろり

ハル:辺をハル

ウ:抜身を

中:取より

ハル:死首ハル

ウ:挑燈

ウ:忝いと

ウ:直

三重:さして三重

上:立帰る

歌:春は,二上リ:春は,ハル:春は歌/二上リ/ハル

下:こね共

ウ:咲す

ハル:娘がハル

ウキン:なれがウキン

ウ:買に

ナヲス:風味も,ハルフシ:風味もナヲス/ハルフシ

中:下市に

ハル:名物ハル

ウ:釣瓶鮓やの

中:弥左衛門

ウ:留守の

ハル:ぬけめもハル

中:娘,ウ:娘中/ウ

小ヲクリ:裾に小ヲクリ

ウ:愛に

ウ:鮎の

長地:押へて長地

ウ:なれさする

中:振袖が

ウ:釣瓶鮓とは

フシ:物らししフシ

地:しめ木に,ウ:しめ木に地/ウ

ハル:桶ハル

色:嚊さん

詞:きのふ