殿廿廿姿
殿廿廿姿
手すりたいぼう小金吾は胸落付麁相そさうとあれば云分もおりないが万紛失ふんじつの物有ゆるさぬが合点か何が扨相違さうゐあらば臺座だいざの別れ御存になされませムウ其一ごんならうたがふに及ばね共中あらためて受んと包をひらき改め見れば相違さうゐもなしげに麁相に極つたなし其方の荷物にもつも持ておいきやれと床几せうぎに残る風呂敷包渡せば受ふしき顔此中ぐゝりのほどけたはイヤ夫は最前かはつた様には思へ共もしやとちよつと見た計といふ間にひらく張皮籠はりかご引ちらけてあはせの袖浴衣ゆかたの間をさがし見てびつく仰天げうてんこり打ふるひコリヤどふじやコリヤないはないは〱ときよろ〱目玉何がない何見へぬとそばも氣の毒目をくばれば兼てたくみのいがみうでまくりしてコレ前髪殿此皮籠かはごの中に人に頼れて高野かうやへ上る祠堂しだう金廿両入置たコリヤくすねたな〱サア出した〱〱サ出しやいのと取ても付難題なんだいに小金吾むつとそり打かけこいつ下郎めが武士に向つて何がなんと今一ごんて見よときつさうかはれどびく共せず盗人たけ〲しいと其高ゆすりくはぬ〱赤鰯あかいわしをひねりかけおどして此場をぬけるのかほろうまいそんなこと春永になされわづか廿両で首綱くびつなのかゝらぬ内四の五のいはずと出した〱ともがりいがみのねだり者モウ堪忍かんにんがと抜かけしがお二方の姿を見てじつとこたへて胸なでおろしコレサ若い人そりや其元の覚へちがひ見らるゝ通足よはをお供したればたとへ両落ちつて有ても目をかけるしよ

フシ:手フシ

地:小金吾,ハル:小金吾地/ハル

色:胸

詞:麁相と

地色:中,ウ:中地色/ウ

ウ:包を

ハル:改めハル

色:相違も

詞:げに

地:床几に,ウ:床几に地/ウ

ハル:風呂敷包ハル

ウ:渡せば

色:ふしき顔

詞:此

地:いふ,ウ:いふ地/ウ

ハル:引ハル

ウ:浴衣の

ウ:恟り

色:コリヤ

ウ:ないは

ハル:きよろハル

ウ:何が

ウ:傍も

中:くばれば

ウ:兼て

ハル:腕まくりハル

色:コレ

詞:此

地色:取ても,ハル:取ても地色/ハル

ウ:小金吾

色:打かけ

地:きつさう,ハル:きつさう地/ハル

色:びく共

詞:盗人

地:もがり,ウ:もがり地/ウ

ハル:モウハル

中:お二方の

ウ:姿を

ウ:じつと

色:撫おろし

詞:コレサ