見立申せと云捨納戸に入ければ妻は心得御身をば隠れ蓑笠参らするヲヽ心遣ひ忘れじと亀井駿河諸共に蓑笠取てきせ参らせ二人も手早く紐引しめいざゝせ給へと主従三人打連立て浜辺に出兼て用意の艀に召給へば両人も飛乗〱サア〱船頭仕れともやひほどけば女房門送りして舟場におり御武運めで度まし〱て御縁もあらば重ねて御目にかゝるべしさらば〱に艪を押立沖へ出船女房はいきせき内へ入相時アヽ心せかれやと火燧ならして油さし神棚おうへに灯をてらし娘〱お安〱と呼出し暮方に手習もおきやらいで今夜はとゝ様侍衆を元船迄送つてなればそなたもねる迄爰に居やほんにぬしとした事が千里万里も行様に身拵へもふ日も暮た用意がよくばいかしやんせとよべどぐつ共いらへなし若昼の草臥で転寝では有まいか銀平殿〱と呼立れば抑是は桓武天皇九代の後胤平の知盛幽霊なり渡海屋銀平とはかりの名新中納言とも盛と実名を顕はす上は恐れ有と娘の手を取上座に移し奉り君は正しく八十一代の帝安徳天皇にて渡らせ給へど源氏に世をせばめられ所詮勝べき軍ならねば玉躰は二位の尼抱奉り知盛諸共海底に沈しと欺き某供奉して此年月お乳
見立テ申せと云捨納戸に入ければ妻は心得御身をば隠れ蓑笠参らするヲヽ心遣ひ忘れじと亀井駿河諸共に蓑笠取ツてきせ参らせ二人も手早く紐引しめいざゝせ給へと主従三人打連レ立ツて浜辺に出兼て用意の艀に召シ給へば両人も飛乗リ〱サア〱船頭仕れともやひほどけば女房門送クりして舟場におり御武運めで度クまし〱て御縁もあらば重ねて御目にかゝるべしさらば〱に艪を押シ立沖へ出船女房はいきせき内へ入相時アヽ心せかれやと火燧ならして油さし神棚おうへに灯をてらし娘〱お安〱と呼出し暮レ方に手習もおきやらいで今ン夜はとゝ様侍衆を元ト船迄送クつてなればそなたもねる迄爰に居やほんにぬしとした事が千里万里も行様に身拵へもふ日も暮レた用意がよくばいかしやんせとよべどぐつ共いらへなし若昼の草臥で転寝では有まいか銀平殿〱と呼立れば抑是は桓武天皇九代の後胤平の知盛幽霊なり渡海屋銀平とはかりの名新中納言とも盛と実名を顕はす上は恐れ有リと娘の手を取上座に移し奉り君は正しく八十一代の帝安徳天皇にて渡らせ給へど源氏に世をせばめられ所詮勝べき軍ならねば玉躰は二位の尼抱奉り知盛諸共海底に沈しと欺き某供奉して此年シ月お乳
ハル:申せとハル
フシ:云フシ
地:妻は,中:妻は,ウ:妻は地/中/ウ
ハル:参らするハル
ウ:心遣ひウ
中:忘れじ中
ハル:参らせハル
ウ:二人もウ
中:いざ,キン:いざ中/キン
ウ:給へウ
ハル:三人ハル
ウ:打ウ
地:両人も,ウ:両人も地/ウ
ハル:〱ハル
ウ:船頭ウ
中:もやひ,ウ:もやひ中/ウ
ハル:女房ハル
ウ:門送りウ
ウキン:御武運ウキン
入:めで度入
中:まし〱て中
ハル:御縁もハル
ウ:〱ウ
ウ:沖へウ
ウ:女房はウ
フシ:いきせきフシ
地色:アヽ,ウ:アヽ地色/ウ
本フシ:火燧本フシ
ハル:ならしてハル
中:油中
ウ:神棚ウ
ハル:灯をハル
ウ:娘ウ
色:呼色
詞:暮方に詞
地色:千里,ウ:千里地色/ウ
ハル:身拵へハル
ウ:もふウ
ウ:用意がウ
ウ:よべどウ
ウ:若ウ
色:有まいか色
詞:銀平殿詞
謡:抑謡
クル:桓武天皇クル
入:平の入
ナヲス:渡海屋,詞:渡海屋,ノリ:渡海屋ナヲス/詞/ノリ
地色:恐れ,ウ:恐れ地色/ウ
ハル:取ハル
ウ:上ウ
中:移し奉り中
中:奉り中
詞:君は詞