調宿退退
調宿退退
座敷を明休息きうそくさせい早ふ〱と権威けんゐを見せてのし上れば女房ははつと返答へんたう当惑とうわくしながらそばに寄御大切な御用に船がなふてさぞ難義なんぎ手前のおきやくも二三日以前より日和待して御逗留たうりうさら船をことはり云てお前の御用にも立がたし殊に先様も武士方なれば御同どうせん船共申されず何とぞ御了簡りやうけん有て今夜の所をお待なされて下さらば其中には日和もなをり何ざうも〱入船の中かり調とゝのへて上ませうだまれ女逗留たうりうがなれば儕には云付ぬ所の守護しゅご権付けんつに云付る奥の侍がこはふておのらが口から云にくゝば身共がじきに云べいとずんど立たもとにすがりおせきなさるは御尤なれ共お前を奥へやりましじきに御相対あいたいさしましては舟宿の難義なんぎ何分の帰らるゝ迄お待なされて下されと手をすりわびれどヤアひちくどい女らうめ奥の武士にあはさぬはさつする所平家の余類よるい義経の所縁ゆかりの者家来ぬかるな油断ゆだんすなととゞむる女房をはね退のけ突退つきのけ又取付あらけなく踏倒ふみたを倒すをもどりかゝつて見る夫走り入てかのが手を取てまつひら御免さるべし則私此亭主ていしゆ渡海とかいやや銀平御立腹の様子我等に仰下さるべしとひざを折手をつけばムウ儕亭主なら云て聞さん身は北条の家来なるが義経の討手をかうむり奥の武士が借たる船此方へからん為奥へふん込身が直に其武士にあはふといへばわが女房が

地色:早ふ,ウ:早ふ地色/ウ

ハル:〱ハル

フシ:見せてフシ

地:女房は,ハル:女房は地/ハル

中:傍に

詞:御大切な

地色:其,ウ:其地色/ウ

ハル:何艘もハル

ウ:入船の

色:だまれ

詞:逗留が

地:ずんど,ハル:ずんど地/ハル

色:すがり

色:がりお

詞:おせきなさるは

地色:お待,ウ:お待地色/ウ

ハル:手をハル

色:ひちくどい

詞:奥の

地色:家,ハル:家地色/ハル

ウ:とゞむる

ウ:又

色:蹴倒すを

ハル:かゝつてハル

ウ:走り

色:手を

詞:まつひら

地:我等に,ハル:我等に地/ハル

色:手を

詞:ムウ