鱠御出家には精進料理分だつて拵へたに終あがつてござらぬかイヤ〱愚僧は山ぶなれば精進せぬ鳥貝鱠よかろぞや夫でもおまへけふは廿八日で不動様の御縁日ほんにそふじや大事の精進ハテなんとしよしよことがないいてきませうとふいと立あいた〱〱ハアお客僧様何となされたイヤ別の事でもないがねて居るは爰のお娘か此子の上を踏こへたれば俄に足がすくばつてヱヽ聞へたちいさふても女子なれば虫がしらしてしやきばつた物であろヤア大降のせぬ中にいてきませうと武蔵坊ばつてう笠ひつかぶりいづく共なく急ぎ行母は娘の傍に寄コレお安其様に転寝して風ひいてたもるなやと抱起せば目をすり〱ヲヽ母様おまへのなさるゝ事見て居て終とろ〱と一寝入ヲヽ夫ならば目をさましてけさならふた清書をとつくりとよふ書てとゝ様のお目にかきやと子には目のなき親心手を引納戸に入にけるかゝる所へ誰共しらぬ鎌倉武士家来引具し亭主に逢ふと内に入ば女房驚走り出夫は他行何の御用と尋れば身は北条が家来相模五郎といふ者此度義経尾形を頼九刕へ逃下るとの風聞によつて鎌倉殿の仰を受主人時政の名代として討手に只今下れ共打つゞく雨風にて船一艘も調はず幸此家に借置たる船日和次第出船と聞願ふ所なれば其船身共が借請艪を押切て下らんず旅人あらはぼいまくり
鱠御出ツ家には精進料理分ンだつて拵へたに終あがつてござらぬかイヤ〱愚僧は山ぶなれば精進せぬ鳥貝鱠よかろぞや夫レでもおまへけふは廿八日で不動様の御縁日ほんにそふじや大事の精進ハテなんとしよしよことがないいてきませうとふいと立あいた〱〱ハアお客僧様何ンとなされたイヤ別の事でもないがねて居るは爰のお娘か此子の上を踏こへたれば俄に足がすくばつてヱヽ聞へたちいさふても女子なれば虫がしらしてしやきばつた物であろヤア大降のせぬ中チにいてきませうと武蔵坊ばつてう笠ひつかぶりいづく共なく急ぎ行母は娘の傍に寄コレお安其様に転寝して風ひいてたもるなやと抱起せば目をすり〱ヲヽ母様おまへのなさるゝ事見て居て終とろ〱と一ト寝入ヲヽ夫レならば目をさましてけさならふた清書キをとつくりとよふ書イてとゝ様のお目にかきやと子には目のなき親心手を引納戸に入にけるかゝる所へ誰レ共しらぬ鎌倉武士家来引具し亭主に逢ふと内に入レば女房驚走り出夫トは他行何ンの御用と尋れば身は北条が家来相模ノ五郎といふ者此度義経尾形を頼九刕へ逃ケ下るとの風聞によつて鎌倉殿の仰を受ケ主人時政の名代として討手に只今下れ共打つゞく雨風にて船一艘も調はず幸イ此家に借置イたる船日和次第出ツ船と聞ク願ふ所なれば其船身共が借請艪を押シ切て下らんず旅人あらはぼいまくり
地:いい,ハル:いい地/ハル
色:あいた色
詞:ハア詞
地色:いて,ウ:いて地色/ウ
ハル:ばつてうハル
フシ:いづく共フシ
地:母は,中:母は地/中
ウ:娘のウ
ハル:傍にハル
色:コレ色
詞:其詞
地:抱,ハル:抱地/ハル
色:すり色
詞:ヲヽ詞
地色:子には,ハル:子には地色/ハル
中:手を,フシ:手を中/フシ
地:かゝる,ハル:かゝる地/ハル
ウ:亭主にウ
ウ:女房ウ
色:尋れば色
詞:身は詞